「20代の血圧の正常値はどれくらいなのかな?」
「血圧を正常値にするにはどうすれば良いんだろう……」
20代の方のなかには同じ年代の方と比べて自分の血圧が高めなのか低めなのか分からず、このような疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
高血圧は動脈硬化の危険因子で、心臓病や脳の病気の発症リスクを高める恐れがあります。
また低血圧では目まいやふらつきなどの症状が現れます。
健康に過ごすためには血圧の正常値がどれくらいなのか理解し、自分の血圧を正常の範囲内に保てるよう努力する必要があるでしょう。
この記事では血圧の正常値や正常値から外れた場合に体に現われる影響、血圧を正常に保つためのポイントについて紹介します。
1.血圧の正常値と高血圧の基準
血圧とは全身に血液を送り出す際に血管にかかる圧力のことです。
通常、「血圧」という際には特に上腕の動脈にかかる圧力のことを指します。
私たち人間の体は心臓がポンプのように収縮・拡張を繰り返すことによって、全身に血液を循環させています。
心臓が収縮して血液を送り出すために動脈にかかる圧力が最高に達した値を「収縮期血圧(最高血圧)」と呼びます。
これに対して血液をため込むために心臓が拡張した際圧力が最低に達した値を「拡張期血圧(最低血圧)」と呼びます。
「20代の血圧の正常値はどれくらいなんだろう?」
このように気になっている方もいらっしゃるかもしれませんが、血圧の正常値は年齢によって変化することはないため、20代でも50代でも同じ値が適用されます。
血圧の正常値と高血圧の基準についてみていきましょう。
【診察室で計測した場合の成人の血圧値の分類(mmHg)】
分類 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
---|---|---|---|
正常血圧 | 120未満 | かつ | 80未満 |
正常高値血圧 | 120~129 | かつ | 80未満 |
高値血圧 | 130~139 | かつ/または | 80~89 |
Ⅰ度高血圧 | 140~159 | かつ/または | 90~99 |
Ⅱ度高血圧 | 160~179 | かつ/または | 100~109 |
Ⅲ度高血圧 | 180以上 | かつ/または | 110以上 |
診察室で血圧を計測した場合、血圧の正常値は収縮期血圧が120mmHg未満かつ、拡張期血圧が80mmHg未満です[1]。
家庭で血圧を測定する際は診察室で測った値よりも5mmHg低く、収縮期血圧が115mmHg未満かつ、拡張期血圧が75mmHg未満と設定されています[1]。
表にある正常血圧、正常高値血圧、高値血圧は高血圧には該当しない正常範囲の値で、治療の必要はありません。
しかし、正常範囲であっても高血圧や疾病を引き起こす可能性が全くないというわけではありません。
というのも正常高値血圧は高血圧の一歩手前であり、注意が必要な高血圧予備軍に該当します。
また高値血圧の方は正常血圧の方よりも脳卒中や心筋梗塞のリスクが高いことも判明しています。
一方高血圧の基準は世界共通で収縮期血圧が140mmHg、拡張期血圧が90mmHgです[2]。
家庭で血圧を測る場合は、5mmHg低い値が適用されるため、収縮期血圧が135mmHg以上または拡張期血圧が85mmHg以上で高血圧と診断されます[1]。
高血圧が体に及ぼす影響については後ほど紹介します。
【関連情報】 「血圧の年代別・男女別平均値を紹介!基準値や高血圧の改善方法は?」についての記事はこちら
2.20代の血圧の平均値
「20代の血圧の平均値はどれくらいなのかな?」
このように自分と同世代の血圧の値を知りたいという20代の方もいるかもしれませんね。
20代の血圧の平均値は男性が収縮期血圧115.3mmHg・拡張期血圧67.7mmHg、女性は収縮期血圧105.7mmHg・拡張期血圧63.8mmHgです[4]。
血圧の平均値をみるに、20代の血圧の平均値は男女ともに正常値に近いといえるでしょう。
自分の血圧が平均値より高かったり、高血圧の基準値である140mmHg/90mmHgに近かったりする場合は、血圧が高めであると自覚しましょう[5]。
血圧の平均値は年代で異なります。
【年代別の血圧の平均値(mmHg)】
年代 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
20代 | 115.3 | 67.7 | 105.7 | 63.8 |
30代 | 117.3 | 73.7 | 107.9 | 66.3 |
40代 | 125.8 | 81.3 | 114.3 | 71.2 |
50代 | 131.7 | 82.0 | 123.7 | 75.4 |
60代 | 135.8 | 78.5 | 131.0 | 76.7 |
70代以上 | 135.8 | 73.1 | 136.1 | 73.0 |
年代が高くなると血圧の平均値も上がる傾向にあるのは、加齢だけではなく、飲酒や喫煙・塩分の多い食事といった生活習慣が大きく影響しています。
血圧を上げないよう日々の生活習慣に気を付けていれば、年を重ねても急激な血圧上昇は避けられると考えられるでしょう。
20代のうちから食生活や飲酒、喫煙といった日々の行動を改善するように意識してみてくださいね。
3.血圧が正常値から外れている場合の影響
「血圧が正常値から外れてしまうとどんな影響が出るのかな?」
血圧が正常値よりも高い場合には高血圧、低い場合には低血圧の疑いがあります。
ここからは高血圧・低血圧が体にどんな影響を及ぼすのかについて詳しく解説していきます。
3-1.高血圧の体への影響
高血圧は日本人の生活習慣病による死亡に最も影響する要因の一つであるといわれています[6]。
血管の壁は本来弾力性に富んでいますが、高血圧ではいつも張り詰めた状態に置かれるため次第に厚く硬くなり、「動脈硬化」が進行してしまいます。
動脈硬化が進行すると血管が破裂したり詰まったり狭くなったりしやすくなり、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞、狭心症などの重篤な病気を引き起こします。
高血圧自体に自覚症状はあまりありませんが、 甘く見て放置していると命に関わる病気を招いてしまう可能性があるのですね。
また高血圧はメタボリックシンドロームの診断基準の一つでもあります。
内臓脂肪の蓄積や高血圧、高血糖、血中脂質の異常は単独でも動脈硬化を進行させますが、それらが重なるほど、動脈硬化が進行し心臓病や脳卒中を引き起こすリスクは高まるとされています。
また内臓脂肪型肥満は高血圧や高血糖、血中の脂質の異常を引き起こす原因であるともいわれているので、血圧の他に最近おなか周りが気になっているという方は要注意です。
「20代だから多少数値が悪くてもまだ平気だよね」
と軽く考えず、将来の健康な生活のためにも血圧が気になる方は早めの改善を心掛けましょう。
メタボリックシンドロームについて詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
3-2.低血圧の体への影響
血圧が通常よりも低い場合を低血圧と呼びますが、血圧が低いからといって病的な状態だとは限りません。
高血圧と違い命に関わる病気を引き起こすことが少ないため、病気とみなされないこともあります。
そのため低血圧には高血圧のように厳密な基準はなく、日本では一般的に収縮期血圧が100mmHg未満の場合を低血圧と呼びますが[7]、医師によって意見が分かれる場合もあります。
しかし低血圧はさまざまな症状を引き起こすことがあるので、そのような場合には適切な対応が必要だといえるでしょう。
低血圧に伴う症状は、臓器に送られる血液量が減少することによるものです。
臓器のなかでも脳は体の最も高い位置にあることから、血圧が低下すると十分な量の血液が供給されなくなり、初めに機能不全に陥るといわれています。
これにより目まいやふらつき、頭痛などの症状を生じます。
加えてだるさや疲れやすさ、肩こり、食欲不振などの症状も現れる場合があります。
また心臓の収縮機能をつかさどる心筋への血液供給が十分でない場合、息切れや狭心症といった症状もたまに見られます。
低血圧は若い女性に多い傾向にあり、特に朝に症状が強く出ます。
上記のような症状がある場合は日常生活に支障が出ると考えられるので、医療機関で適切な検査を受け、改善を目指しましょう。
4.血圧を正常に保つためのポイント
「血圧を正常に保つにはどんなことに気を付けたら良いのかな?」
このように具体的に何をすれば良いのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
血圧は生活習慣を改善することで正常に保つことができるのです。
ここからは血圧を正常に保つのに重要な五つの生活習慣を紹介します。
ポイント1 食生活を見直す
血圧を正常に保つには食生活を見直す必要があります。
まず、血圧が高めの方は減塩を心掛けましょう。
日本人の高血圧の最大の原因は食塩の摂り過ぎであるといわれています。
これは食塩に含まれる「ナトリウム」というミネラルのはたらきによるものです。
食塩を摂り過ぎると血中のナトリウム濃度が高くなりますが、これを薄めようとして体は水分をため込み、血液量が増加します。
そのため血液が血管の壁を押す力が強くなり、血圧が上昇してしまうのです。
血圧が高めの場合はまず1日の食塩摂取量を6g未満に抑えることを目標に減塩に取り組みましょう[8]。
20代男性のナトリウム平均摂取量は食塩相当量で10.6g、同じく女性の平均摂取量は8.3gです[9]。
多くの方が塩分を摂り過ぎていると考えられますね。
塩分を摂り過ぎないためには、以下のような点に注意しましょう。
外食や加工食品を利用する機会が多い方もいらっしゃるかもしれませんが、知らぬ間に多くの塩分を摂取してしまう可能性があります。
麺類の汁は全て飲まない、塩分の多い漬物は控えるといったことを心掛けましょう。
またご自身で調味料の量を調節できる自炊に取り組み、減塩調味料を使ったり食材の味を活かしたり するのも良いでしょう。
ナトリウムの排泄を促し、血圧を低下させるミネラル「カリウム」を摂取することも重要です。
カリウムは野菜や果物、大豆製品などに多く含まれています。
また若年・中年の男性においては肥満が原因の高血圧も増加しているため、摂取カロリー(エネルギー摂取量)を適切に制限することもポイントです。
ご自身に必要なカロリーを把握し、摂取カロリーを調整しましょう。
カリウムを多く含む食べ物についてや1日当たりの必要カロリーについては以下の記事で解説しています。
また内臓脂肪を減らすためのポイントについては以下の記事をご覧ください。
一方、血圧が低めの場合にはたんぱく質やビタミン・ミネラルが豊富な食品を食べ、バランスの良い食事を心掛けましょう。
いろいろな食品から栄養素を摂取し、それぞれの栄養素が持つはたらきによって体は健康的に保たれています。
そのため摂取する栄養素に偏りがあると、栄養素が十分な力を発揮できないだけでなく、余分な栄養素が蓄積されて肥満となってしまう場合もあります。
自分の血圧の値に応じて食生活を見直してみてくださいね。
栄養バランスの取れた食事については以下の記事で解説しています。
栄養バランスの取れた食事とは?主食・主菜・副菜のポイントを紹介
ポイント2 運動する習慣を身に付ける
適度に運動する習慣を身に付けることも血圧を正常に保つのに重要なポイントです。
高血圧の改善には有酸素運動を毎日30分以上行うのが望ましいとされています[10]。
「そんなに運動する時間なんてつくれないよ……」
と思った方もいらっしゃるかもしれません。
まとまった時間が取れない場合には、1回につき最低でも10分以上持続した運動を合計1日40分以上になるように実施しても良いとされています[10]。
有酸素運動では体脂肪を燃料として体を動かすので、体脂肪の減少にも効果が期待できます。
無理のない範囲で少しでも体を動かす機会を増やしていきましょう。
また低血圧の改善にも運動が勧められています。
運動をすると、血液循環が向上します。
それに伴って心臓から送り出される血液の量が増えるため、血圧の上昇が見込めるでしょう。
また低血圧の原因として筋肉量が少ないことなども考えられるため、体を鍛えることも低血圧の改善につながると考えられます。
ただし運動をする際はけがをしたり翌日に疲れを残したりしないため、準備運動を十分に行うようにしてください。
また急な運動は体に大きな負担をかけるので、まずは掃除や洗濯などの日常的な活動のなかで活動量を増やすことから始めても良いでしょう。
ポイント3 禁煙・節酒を心掛ける
血圧が高めの方は禁煙・節酒も心掛けましょう。
たばこにはニコチンや一酸化炭素といった有害物質が含まれています。
ニコチンは血管を収縮させて血液循環を悪くすることで、心拍数や血圧を上昇させ心臓や血管に負担を与えます。
また一酸化炭素は酸素の代わりに赤血球と結び付くことで体内を酸素不足状態にし、心拍数・血圧の上昇を招きます。
また喫煙は「善玉コレステロール(HDLコレステロール)」を減らし「悪玉コレステロール(LDLコレステロール)」を増やすため、動脈硬化を引き起こす原因になります。
このように喫煙は血圧を上げ、動脈硬化を引き起こす可能性もあるため、現在たばこを吸っている方は1日も早く禁煙をしましょう。
またたばこを吸っていない方も、たばこを吸う方の近くにいると受動喫煙による影響を受ける恐れがあるため注意してください。
また過度な飲酒は高血圧の原因になるといわれているため、禁酒はしないまでも節度を守ってたしなむようにしましょう。
お酒の健康への影響は飲んだ量ではなく、お酒に含まれる純アルコール量によります。
1日のアルコール摂取量の目安は純アルコール量に換算すると20gです[11]。
代表的なお酒の純アルコール量20gに相当する量を以下の図でご紹介しています。
適量を守るだけでなく、休肝日を設けることも重要です。
週1日以上はお酒を飲まない日をつくるようにしましょう[12] 。
また女性の場合は男性よりも肝臓が小さいことや、体脂肪が男性よりも多く体内の水分が少ないことなどから1日の適量は男性よりも少なめと認識しましょう。
少量の飲酒なら全く飲まない方よりも心筋梗塞や循環器病による死亡率が低いことが判明していますが、血圧の値を指摘されている方は飲酒量について主治医に確認してくださいね。
[11] 厚生労働省「健康日本21」
[12] 厚生労働省 e-ヘルスネット「休肝日 」
ポイント4 十分な睡眠と休養をとる
しっかりとした睡眠と休養を確保するのも血圧を正常に保つのに重要です。
精神的なストレスは高血圧の原因の一つと考えられています。
ストレスを感じたり、緊張状態になったりすると交感神経が優位になり、血管が収縮するため血圧が上昇します。
十分な睡眠時間が確保できないと交感神経が優位になるため、ストレスを和らげるには睡眠・休養をしっかりとることが重要です。
ストレスによって脳が緊張状態にあると寝付けない場合もあるため、眠る前は本を読んだり音楽を聴いたりして脳をリラックスさせることで、自然な入眠を促しましょう。
また規則正しい生活を送ることは低血圧の予防にもつながります。
血圧を正常に保つためにも毎日早寝早起きを心掛け、規則正しい生活を習慣化しましょう。
ポイント5 しっかりと入浴する
血圧を正常に保つにはシャワーなどで済ませるのではなく、しっかりと入浴するのがおすすめです。
低血圧の方はお湯につかることで、血管が拡張し血液循環が改善すると考えられます。
また就寝前の入浴は、副交感神経を優位にするともいわれています。
さらに入浴によって就寝前に体温を上げることは、深い睡眠にもつながります。
就寝の2~3時間前に38℃のお湯なら25~30分、42℃の熱めのお湯なら5分程度入浴すれば、体温が0.5℃ほど上がり、寝つきが良くなるでしょう[13]。
良質な睡眠はストレスや緊張を和らげてくれるので、心身ともに健康的に過ごすためにも入浴する時間は大切にしたいものですね。
しかし寒い季節の入浴時には、急激な温度変化による血圧の急上昇・急降下で脳出血などを招く「ヒートショック」が引き起こされる恐れがあります。
内閣府大臣官房政府広報室が「政府広報オンライン 」というサイトで寒い季節の入浴の注意点について情報を公開しているので、参考にしてみてくださいね。
入浴時の注意点を守り、お湯につかってしっかり体を温めましょう。
5.20代の血圧の正常値についてのまとめ
血圧の正常値には年齢による差はありません。
どの年代であっても病院で測定する場合は120/80mmHg、家庭で測る場合は115/75mmHgが血圧の正常値です[14]。
一方、血圧は飲酒や喫煙、食生活などのさまざまな習慣によって変動するため、血圧の平均値は年齢によって異なります。
厚生労働省によると20代の血圧の平均値は男性115.3/67.7mmHg、女性は105.7/63.8mmHgであり[15]、正常値よりも低めであることが分かります。
しかし正常値から外れて高血圧になってしまうと動脈硬化を発症し、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気を招く可能性があります。
また低血圧になった場合には血液が十分に供給されないために、目まいや立ちくらみ、頭痛といった症状が現れることがあります。
血圧を正常に保つにはバランスの良い食事を摂って運動を習慣化するなど、生活習慣を改善することがポイントです。
また自分の健康状態を把握するためにも、日常的に血圧を測る習慣を身に付けることも重要ですよ。
[14] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧 」