「頭痛が気になるけど、高血圧と関係があるのかな?」
このような疑問をお持ちになっている方もいるかもしれません。
一般的に、血圧が高いとさまざまな病気を引き起こすリスクがあるといわれますが、血圧と頭痛に関連性はあるのでしょうか。
この記事では、高血圧によって頭痛の症状が起こるのか詳しく解説します。
また高血圧を予防する方法についても紹介しているため、ぜひ参考にしてみてください。
1.高血圧は自覚症状がない!頭痛の痛みで血圧が上がっている可能性も
血圧とは、心臓から送り出された血液が、血管の内壁にかける圧力のことです。
そして高血圧とは、血圧の数値が130/90mmHg以上の状態をいいます。
ここでは、頭痛と高血圧の関係性について詳しく解説します[1]。
高血圧には自覚症状がほとんどありません。
そのため、頭痛が起こっている場合は別の要因が疑われます。
血圧は常に変動しており、ストレスや時間、季節などによっても変わります。
高血圧が頭痛を引き起こすのではなく、頭痛が一時的に血圧を高めている可能性があります。
まずは、頭の痛みを抑えるために鎮痛薬などを使用してみてください。
血圧を下げるのにも役立ちます。
高血圧が心配な方は、頭痛がおさまったあとに、再度血圧を測ってみましょう。
そこで正常値が確認できれば、頭痛によって一時的に血圧が上がっていたものだと考えられます。
【関連情報】 「高血圧とは?基準値や健康上のリスク、改善のポイントを徹底解説」についての記事はこちら
2.頭痛を引き起こす病気・症状
頭痛は血圧にかかわらず、誰にでも見られる症状の一つです。
例えば、以下のような病気・症状でも頭痛が引き起こされます。
2-1.肩こり
肩まわりの筋肉がこわばって血行不良になり、だるさや痛みの症状を引き起こすこともあります。
肩こりの原因は普段の姿勢や日々のストレス、体の冷えなどが挙げられます。
蒸しタオルや入浴などで肩を温めたり、適度な運動や体操をしたりすると良いでしょう。
湿布や筋弛緩薬を使うのもおすすめです。
2-2.自律神経失調症
自律神経失調症とは、不規則な生活習慣やストレスなどによって、自律神経である交感神経と副交感神経のバランスが乱れて起こる症状のことです。
自律神経失調症になると、頭痛のほかにも、慢性的な疲れやだるさ、動悸、不眠、便秘などの症状を引き起こします。
自律神経失調症と考えられる場合は、ストレスの発散や規則的な睡眠、栄養バランスの良い食事を心掛けることが大切です。
2-3.更年期障害
更年期障害とは、更年期(40歳を過ぎたころ)に現れる、心身に起こるさまざまな症状のことです。
性ホルモン分泌量の低下によって引き起こされ、自律神経失調症に近い症状が現れます。
主な症状は、頭痛やめまい、動悸、イライラなどです。
また男性は機能不全(ED)、女性は生理不順も症状として当てはまります。
初期症状がだるさや不眠など、自分では気づきにくい症状である点に注意が必要です。
治療法としては、病院へ受診してホルモン剤をはじめとする薬物治療や漢方療法を受けることが挙げられます。
2-4.鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血とは一般的に「貧血」と呼ばれるなかでも、最も頻度が高い疾患です。
体内に流れている赤血球に含まれるヘモグロビンと鉄分が欠如し、全身に十分な酸素が供給されないことによる倦怠感や動悸、頭痛、息切れなどを引き起こします。
予防的な治療となりますが、鉄分を含む食事を欠かさず取ることが有効です。
2-5.適応障害
適応障害とは、ある特定の状況が引き起こすストレスによって、社会生活に支障をきたす状態のことです。
適応障害が起こる原因は人によってさまざまですが、日常生活での出来事や生活環境の変化にうまく対処できないときに起こりやすいといわれています。
適応障害で起こる頭痛や不安感、不眠などは健康な方にも現れる症状ですが、適応障害の場合は、それらの症状によって対人関係や社会生活を続けることが困難な状態を指します。
原因となっているストレスを軽減させ、心理的な回復を図ることが必要です。
症状によっては薬物治療が必要な場合もあります。
3.高血圧によって頭痛が起こる心配なケース
頭痛は血圧の高さに関係なく現れるため、必ずしも「頭痛の原因が高血圧」とは言い切れません。
しかし、高血圧によって頭痛がみられるケースもあります。
ここでは、高血圧と頭痛に関連する病気について解説します。
3-1.二次性高血圧の兆候
二次性高血圧の兆候として早朝に頭痛が起こるケースがあります。
二次性高血圧とは、体質や環境などによって発症するものではなく、ある特定の原因による高血圧を指します。
例えば、薬によるものです。
二次性高血圧の兆候には、頭痛のほか、夜間頻尿や夜間呼吸困難、昼間の眠気、抑うつ状態、集中力の低下などもみられます。
3-2.高血圧性脳症
高血圧性脳症とは、急激な血圧上昇により症状が現れている状態のことです。
稀な病気ですが、症状によっては、頭痛や痙攣(けいれん)、意識障害などを引き起こす可能性があります。
高血圧性脳症を放置すると、後遺症を残したり、死に至ったりするケースもあります。
脳への障害を少しでも減らすために、速やかに治療しなくてはいけません。
重症化すると命に関わる高血圧性脳症ですが、日々の血圧管理が予防につながります。
血圧は自覚症状が現れないため、日常的に血圧を測る習慣をつけましょう。
普段血圧が高くない方でも、急激に血圧が上がって激しい頭痛や嘔吐が起これば高血圧性脳症が疑われるため、速やかに受診しましょう。
3-3.脳血管障害(脳卒中)
脳血管障害とは、何らかの原因で脳血管に異常がある疾患の総称です。
具体的には脳の血管が破れる、あるいは詰まるなどして細胞に栄養が届かなくなります。
脳の血管が破れるタイプには「脳出血」「くも膜下出血」、脳の血管が詰まるタイプには「脳梗塞」が挙げられます。
脳出血や脳梗塞が起こると、意識低下、半身まひや言語障害、認知機能低下などの症状が現れます。
初期段階で適切な治療をすれば、後遺症を残さず治せることもありますし、リハビリによって大きく回復するケースもあります。
くも膜下出血になると、激しい頭痛や嘔吐、意識障害が突然起こります。
軽症で無事に入院できても、再度発症する可能性があるため安心できません。
これら脳血管障害は突然現れるケースがほとんどですが、頭痛やめまい、手足のしびれなどの前兆が起こる場合もあります。
こういった症状が現れた場合は、すぐに救急車を呼んで検査を受けましょう。
脳血管障害の主な原因は高血圧と言われています。
「高血圧で頭痛がする」といった場合、頭痛以外の症状がなければ慌てる必要はありませんが、これまでに経験したことがないような強い頭痛や、症状が続く場合には、早めに病院を受診してください。
また、高血圧の場合は脳血管障害を引き起こしやすいため、血圧を毎日測定し適切にコントロールすること、減塩を心掛けることが大切です。
3-4.虚血性心疾患
虚血性心疾患とは、心臓の筋肉に血液を送る冠状動脈が狭くなる、あるいは塞がるなどして、血液の流れが悪くなり、心臓が血液不足に陥る状態のことです。
虚血性心疾患は「心筋梗塞」「狭心症」の大きく二つに分けられます。
狭心症は心臓を取り巻く血管・冠動脈が細くなって血液が流れにくくなった状態です。
一時的に胸の痛みや圧迫感を引き起こし、安静にしていると治ります。
心筋梗塞は心臓を取り巻く血管・冠動脈が完全に詰まり、心臓に血液が送れなくなっている状態です。
心筋が酸素不足になり、心筋細胞が壊死してしまいます。
心筋梗塞は命に関わる危険性があり、狭心症も進行すれば心筋梗塞を引き起こす可能性があるため、気をつけなくてはいけません。
心筋梗塞の原因は、主に生活習慣病による動脈硬化の進行と言われています。
血圧の高い方は、生活習慣を見直してみてください。
また虚血性心疾患の症状として頭痛を伴うケースも多く報告されています。
心配な方は速やかに受診しましょう。
3-5.妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群はその名のとおり、妊娠時に高血圧を発症している状態のことです。
約20人に1人が発症するといわれています。
妊娠20週以降、分娩12週までに血圧の上昇(軽症:140mmHg以上、重症:160mmHg以上)が見られたり、高血圧に蛋白尿が伴ったりする場合は、妊娠高血圧症候群を疑いましょう。
自覚症状として頭痛や耳鳴りなどが挙げられますが、ほとんどは自覚がないため、定期的な血圧測定が大切です。
重症化すると母体だけでなく、胎児の発育にも悪影響を与える可能性があります。
妊婦検診で高血圧や蛋白尿を指摘されたことがあり、頭痛など体調に変化が見られる場合には、速やかに受診して医師の指示に従いましょう。
4.高血圧は放っておくと危険!毎年診断を受けましょう
高血圧は放っておくと非常に危険です。
血圧が高い場合は生活習慣を見直し、毎年診断を受けるようにしましょう。
ここでは、高血圧を放置するとどうなるのかについて解説します。
高血圧が引き起こす病気のなかには、命に関わる危険性もあるため、放っておくと非常に危険です。
しかし、基本的に高血圧は自覚症状がないため、日頃から血圧を測らなければ気づきません。
食塩の過剰摂取や飲酒、運動しない生活を続ける、肥満を放置するなどをしていると、知らないうちに進行してしまいます。
高血圧が進行して動脈硬化になると、以下の合併症が引き起こされる可能性があるため、注意しましょう。
- 脳出血/脳梗塞
- 心不全
- 心筋梗塞/狭心症
- 高血圧性腎障害
- 眼底網膜病変
高血圧を放置しないためには、毎年健診を受けることが重要です。
心電図や眼底検査の結果から、高血圧による影響が分かることもあります。
5.高血圧予防のために自分でできること
血圧を高める最大の原因は、食塩の摂り過ぎです。
そのほか、肥満、飲酒、運動不足も原因となります。
高血圧は喫煙と並ぶ最大の生活習慣病リスク要因です。
日々の生活習慣を見直して、予防しましょう。
ここからは、高血圧を予防するために自分でできることについて説明します。
5-1.食生活の見直し
最も取り組みやすい方法が、食生活の改善です。主に以下の方法が挙げられます。
- 食塩制限をする
- カリウムを摂取する
- 規則正しい食事を心掛ける
減塩目標は、高血圧の方で1日当たり6g未満です[2]。
日本人では、加工食品からの塩分摂取が多いといわれています。
食塩相当量をチェックしたり、減塩食品を上手に利用したりして、食塩制限をしましょう。
また、カリウムは食塩を腎臓から排出し、血圧を下げる効果が期待できます。
カリウムを多く含んでいる野菜や果物、大豆製品を積極的に摂取することをおすすめします。
肥満は高血圧の原因となります。普段の食事は腹8分目を心掛け、1日3食規則正しく摂りましょう。
5-2.運動をする
適度な運動を心掛けることも重要です。
血圧を下げるには、毎日30分以上、中強度(ややきつい程度)の有酸素運動がすすめられています[3]。
おすすめの運動メニューは、ウォーキング、ステップ運動、スロージョギングなどです。
1回で30分以上の運動が大変な場合は、朝と晩に分けて運動するのも良いでしょう。
分ける場合は1回につき10分以上、かつ1日で合計40分以上運動することが推奨されています。
生活のなかで、体を動かすことを意識するのもおすすめです。
例えば、ひと駅分歩く、掃除をする、エレベーターを使わないなどが挙げられます。
無理なく始められることから、少しずつ挑戦してみてください。
また、ラットとヒトにおいて「適度な運動」が高血圧を改善するメカニズムが報告されました[4]。
軽いジョギング程度の運動中、足の着地時に頭部(脳)に伝わる適度な物理的衝撃により、血圧を上げるタンパク質(アンジオテンシン受容体)の発現量が低下して血圧低下が生じることが、高血圧ラットを用いた実験で報告されました。
さらに、この頭部への物理的衝撃を高血圧の方に適用すると、ヒトでも高血圧が改善することが世界で初めて報告されました[4]。
5-3.ストレスを溜めない
ストレスは交感神経を刺激して、血圧を上げてしまいます。
1日のなかでリラックスできる時間をつくり、ストレスを溜めないようにしてください。
睡眠や休息を十分に取ることも大切です。
睡眠不足は心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めるため、忙しい毎日でも睡眠時間を削ることがないようにしましょう。
5-4.節酒する
お酒を飲む習慣は、高血圧の原因になります。
特に、大量のアルコール摂取は高血圧だけでなく、脳卒中やアルコール性心筋症なども引き起こす恐れがあります。
適切なアルコール量は、1日で20g程度です[5]。
これはビール瓶(500ml)1本分、ウイスキー・ブランデー60mlくらいの量です。
お酒を飲むときの目安にしてくださいね。
5-5.禁煙する
喫煙をしている方は禁煙をしましょう。
たばこは、血管が収縮して血圧が上がる原因となります。
また、血流が悪くなって動脈硬化を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
自力での禁煙が難しいと感じたら、禁煙補助薬や禁煙外来も検討してみてくださいね。
6.高血圧と頭痛についてのまとめ
頭痛は一般的な方でもよく起こるものであるため、頭痛の原因が高血圧とは言い切れません。
ほかの原因によって頭痛が引き起こされていると考える方が良いでしょう。
しかし、高血圧によって頭痛が起こるケースもあります。
高血圧を放置しておくと重大な病気を引き起こすリスクも高いため、注意しましょう。
頭痛がひどい場合は早めに受診してみてください。
この記事の監修者
内科認定医・がん治療認定医
【経歴】
国立大学医学部医学科卒業後、公立病院にて初期研修の2年を終了後、3年目からはがん治療を専門としながら幅広く内科疾患の診療に従事。治療が必要となる前の生活習慣の改善、また病気についての正しい知識が大事であることを実感し、病気についての執筆活動にもあたっている。