下痢とは?分類や原因、食事のポイント、受診の目安について解説
「便が緩いんだけど、これは下痢なのかな?」
「下痢のときにはどうしたら良いんだろう?」
便が軟らか過ぎる、排便回数が多過ぎるといった悩みを持っていても、それが下痢に当たるのかよく分からないという方もいらっしゃるでしょう。
下痢とは通常よりも水分量が多い便や、液状に近い便が頻回に排せつされる状態のことです。
下痢が続くと、急な便意により生活に支障が出ることもあるでしょう。
この記事では下痢の定義や分類、原因、下痢の際の食事のポイントを詳しく解説するので、下痢でお悩みの方はぜひ参考にしてくださいね。
1.下痢とは
下痢は水分を多く含んで軟らかい「軟便」や、液状に近い「水便」が排せつされる状態のことで、多くの場合、排便の回数や量が増加するとされています。
「おなかが緩くてトイレに行く回数が多いんだけど、これは下痢なのかな?」
このように気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
排便回数が多いだけでは下痢とはいい切れず、便の性質や状態、量なども確認する必要があります。
これは便通を良くする食物繊維などを多く摂ることで、一時的に排便回数が増えることがあるためです。
下痢は、軟便や水便が1日に3回以上排せつされる場合と定義されています[1]。
下痢は、持続する期間が2週間以内なら「急性下痢」、4週間を超える場合は「慢性下痢」とされます[2]。
急性下痢は感染症や薬の副作用によって起こることが多く、慢性下痢の多くは感染症ではない病気の症状であるといわれています。
下痢をしても、受診することなく数日で治まったという経験がある方もいらっしゃるでしょう。
しかしなかには早急に治療が必要な場合もあるため、下痢の期間を踏まえて想定される病気の検査をすることが重要なのです。
また下痢の状態では体に力が入らず頭がぼんやりする、急な便意が不安で外出が難しくなるといった状況が続くことで「QOL(生活の質)」が下がる場合もあります。
自分の健康状態を把握するため、日頃から排便状況や便の状態を確認することが大切といえるでしょう。
[1] 奈良県医師会「下痢症について」
[2] 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「下痢」
2.下痢の分類と原因
「そもそもどうして便が水っぽくなるのかな?」
「下痢になるメカニズムを知りたい」
このように気になっている方もいらっしゃるでしょう。
下痢は食べ物が消化・吸収される過程で、体内に水分が適切に吸収されなかったり、消化液などの水分が出過ぎたりすることで起こります。
ヒトが食べ物を摂取すると、口から食道、胃、小腸、大腸、肛門と続く消化管を通るなかで消化・吸収されます。
この際、ヒトは食べ物や飲み物から1日約2Lの水分を摂取し、また1日約7Lの消化液を分泌しています[3]。
つまり1日に合計9Lの水分が消化管を通るのです[3]。
通常はこのうち99%が腸で吸収され、便にはわずか1%、100g程度の水分しか残りません[3]。
この水分の分泌量と吸収量のバランスが崩れ、便の水分量が増え過ぎると下痢になるのです。
下痢の原因についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
下痢の原因は何?症状や予防するためのポイントを分かりやすく解説
[3] 一般社団法人 日本臨床内科医会「わかりやすい病気のはなしシリーズ42 下痢の正しい対処法」
2-1.浸透圧性下痢
浸透圧性下痢とは、糖分や人工甘味料の摂り過ぎによって起こるタイプの下痢です。
糖分や人工甘味料が多い食べ物は浸透圧(水分を引き付ける力)が高いため、水分を多く含んだまま腸を通過します。
この結果、腸での水分の吸収がうまくいかず下痢が起こるのです。
こうした甘い食べ物以外にも、牛乳を飲むとおなかを壊す「乳糖不耐症」もこのタイプの下痢です。
日本人を含むアジア人などでは授乳期を過ぎると、牛乳に含まれる「乳糖」を分解する機能が低下するといわれています。
しかし授乳期を過ぎても牛乳などを飲むことがあるため、乳糖不耐症になってしまうことがあります。
乳糖が消化・吸収できず浸透圧が高くなると、腸内に水が多くなるため下痢になるのです。
また食べ過ぎや飲み過ぎによる消化不良で浸透圧性下痢が起こる場合もあります。
2-2.分泌性下痢
腸液の分泌量が増えることで便の水分が多くなるのが、分泌性下痢です。
このタイプの下痢は感染症や、ホルモンの影響などによって起こります。
食中毒をもたらす細菌やウイルスが増殖して消化管を傷つけたり、毒素を分泌したりする影響で消化液が増え下痢になるのです。
また消化・吸収に関するホルモンの分泌異常により、便中の水分が増えて下痢になることもあります。
この他、下剤によっては腸液の分泌を促進し、分泌性下痢を引き起こす場合もあります。
2-3.運動亢進性下痢(ぜん動運動性下痢)
運動亢進性下痢(ぜん動運動性下痢)は腸の「ぜん動運動」が活発過ぎることで起こる下痢です。
便が正常な硬さになるには、便がある程度の時間大腸にとどまっている必要があります。
しかしぜん動運動が活発過ぎると、食べ物が短時間で腸を通過してしまうため、十分に水分が吸収されないまま便が排せつされるのです。
運動亢進性下痢の原因には過敏性腸症候群やバセドウ病などの病気があります。
過敏性腸症候群は大腸や小腸に潰瘍や腫瘍などの明らかな異常がないにもかかわらず、下痢や便秘といった便通の悪化、腹痛、腹部の膨満感などの症状が現れる病気です。
身体的・精神的ストレスが原因だと考えられています。
バセドウ病は喉仏の下にある甲状腺という臓器から分泌される「甲状腺ホルモン」が異常に増え過ぎてしまう病気です。
甲状腺ホルモンは全身の臓器の「代謝」をつかさどっています。
このため、バセドウ病になると全身の代謝が活発になり過ぎてしまうのです。
この影響で消化管のぜん動運動が過剰になって下痢になる他、動悸(どうき)や体重の減少、指の震え、発汗などの症状が現れます。
2-4.滲出性下痢
滲出性下痢は、腸の炎症から血液や細胞内の液体がしみ出たり、腸からの水分吸収が低下したりすることで起こる下痢です。
滲出性下痢は「クローン病」や「潰瘍性大腸炎」といった指定難病によって起こります。
これらは腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍を引き起こす原因不明の病気で、総称して炎症性腸疾患といいます。
クローン病は若者に多い病気で、口腔から肛門まで消化器のあらゆる部位に炎症や潰瘍が生じ、腹痛や下痢、血便、体重減少などを招きます。
また潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症を生じ、下痢、血便、腹痛などの症状を引き起こします。
3.下痢のときの食事のポイント
「下痢のときはどんな食事を摂ると良いのかな?」
「下痢になったら食べない方が良いものはあるんだろうか……」
このように気になっている方もいらっしゃるでしょう。
この章では、下痢のときの食事のポイントを詳しく解説します。
下痢のときの食事のポイントについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
下痢のときの食事はどうすべき?食材選びや調理の際のポイントを解説
ポイント1 水分を十分に摂る
下痢のときには体内の水分が失われがちです。
このため、水分を補給することが重要です。
細菌やウイルスが原因での下痢は、原因となっている物質を体の外に出そうとする体の正常な反応です。
しかし下痢が続くと脱水症状に陥り、口の渇きや尿量の減少、頭痛、立ちくらみなどが起こります。
悪化すると血圧の低下や心拍の異常が起こり、命に関わる恐れもあります。
特に子どもや高齢者は自覚症状が少ない場合があり、重症になる恐れが高いため注意が必要です。
下痢が続いて食事が難しい場合でも、こまめに水分補給するようにしましょう。
また子どもが飲みたがらない場合でも、下痢の際には必ず水分を摂らせてください。
水分補給についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
水分補給は1日にどれくらい必要?理想的な量や摂取のポイントを解説
ポイント2 ミネラルを補給する
下痢のときには、「ミネラル(電解質)」を十分に摂取することが重要です。
下痢のときには水分だけでなく、ナトリウムやカリウムといった体内のミネラルも失われがちです。
ナトリウムやカリウムは、体に必要なミネラル(必須ミネラル)の一種です。
ナトリウムは主に食塩(塩化ナトリウム)の形で摂取され、体内では主に細胞の外の体液(細胞外液)に含まれています。
細胞外液の浸透圧を調節するはたらきにより、細胞外液の量を保つ作用があります。
またカリウムは、細胞内液の浸透圧を調節するはたらきがあります。
神経の興奮や筋肉の収縮に関わったり、体液のpHバランスを保ったりする他、ナトリウムを排せつする作用もあります。
ナトリウムもカリウムも体内では重要なはたらきをするのですね。
水分と共にこれらのミネラルを補給するためには、経口補水液やスポーツドリンクを摂取すると良いとされています。
ナトリウムについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ナトリウムとは?体内でのはたらきや摂取目標量、摂取の注意点を解説
カリウムについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介
ポイント3 消化吸収の良いものを選ぶ
下痢のときには消化吸収の良い食べ物を選ぶことが重要です。
具体的にはおかゆや重湯、軟らかく煮たうどん、みそ汁、野菜スープ、すりおろしたりんごなどが勧められます。
反対に脂質や食物繊維を多く含む食品は消化が悪く、消化管に負担をかける恐れがあるため避けた方が良いとされています。
また冷たいものやアルコール、コーヒー、炭酸飲料などの刺激の強い飲食物は腸に刺激を与え、下痢を悪化させる恐れがあるため避けるようにしましょう。
4.下痢のときの受診の目安
多くの場合、急な下痢は数日もすれば治るといわれています。
ただし、なかにはすぐに治療が必要なケースもあるため注意が必要です。
受診すべき症状としては、経験したことがないほど激しい下痢である、便に血が混じっている、下痢以外に吐き気や嘔吐(おうと)がある、熱があるといったものが挙げられます。
また同じものを食べた人にも下痢が見られる、排便後にも腹痛が続く、症状が悪化し改善の気配がない、脱水症状が見られるといった場合もすぐに受診すべきです。
また、これらに当てはまらなくても、子どもや高齢の人、心臓病や糖尿病、腎臓病などの持病がある人は早めの受診が勧められます。
なお受診の際には下痢の始まった時期や、排便の頻度、便の状態、腹痛や下痢以外の症状の有無などについて伝えると良いでしょう。
また海外旅行や服用している薬、下痢になりやすい状況などの思い当たる原因についても報告することで、よりスムーズな診察につながりますよ。
5.下痢についてのまとめ
下痢とは通常よりも水分量が多い軟便や、液状に近い水便が、頻回に排せつされる状態のことです。
具体的には、軟便や水便が1日に3回以上排出される場合と定義されます[4]。
ヒトが食べ物を摂取する際、食べ物に含まれる水分や消化管から分泌される消化液のほとんどは腸から吸収されます。
しかしこれらの水分の分泌量と吸収量のバランスが崩れ、便の水分量が増え過ぎると下痢になります。
下痢には、糖分や人工甘味料の摂り過ぎによって起こる浸透圧性下痢、細菌感染やホルモン分泌の影響などによって腸液の分泌量が増えることで起こる分泌性下痢があります。
また、過敏性腸症候群やバセドウ病などによりぜん動運動が活発になり過ぎることで起こるぜん動運動性下痢、クローン病や潰瘍性大腸炎での腸の炎症によって起こる滲出性下痢があります。
下痢の際には、経口補水液やスポーツドリンクなどで水分やミネラルを十分に摂取し、おかゆや重湯、すりおろしたりんごなどの消化・吸収の良いものを食べるようにしましょう。
なお、経験したことがないほどの激しい下痢がある、便に血が混じっている、吐き気や嘔吐、発熱などを伴っている、同じものを食べた人も下痢が見られる、排便後にも腹痛が続く、改善の気配がない、脱水症状が見られるといった場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
この記事を参考にご自身の下痢がどのようなものかを把握し、健康管理にお役立てくださいね。
[4] 奈良県医師会「下痢症について」