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糖尿病の合併症とは?網膜症・腎症・神経障害・動脈硬化について解説

「糖尿病にはどんな合併症があるんだろう?」

「糖尿病の合併症を発症するとどうなるのかな……」

糖尿病は合併症が恐ろしいと聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。

糖尿病になると血液中に増え過ぎたブドウ糖が血管を傷つけることで、多くの合併症が起こります。

合併症の影響は目や腎臓、神経をはじめ、心臓や脳を含む全身に及びます。

これらの合併症は命に関わったり、失明や足の切断といった重大な結果につながったりする恐れがあります

この記事では糖尿病の合併症について詳しく解説しますので参考にしてくださいね。

1.糖尿病とは

自分でインスリン注射をうつ高齢女性

「糖尿病ってよく聞くけどどんな病気なんだろう?」

糖尿病は知っていても、どのような病気で何が原因なのかをよく知らないという方も多いのではないでしょうか。

糖尿病は慢性的に「血糖値」の高い状態が続く病気です。

血糖値とは、血液中の「ブドウ糖」の濃度のことです。

ブドウ糖とは
ヒトのエネルギー源の一つである「糖質」のなかで、最も小さく基本的な「単糖類」の一種です。ブドウ糖は自然界に最も多く存在する単糖類で、動植物が活動するための重要なエネルギー源です。また特別な状況を除き、脳が利用できる唯一のエネルギー源でもあります。

ヒトが食事を摂ると食品中の栄養素が消化され、小腸などから体内に吸収されます。

この際、食品に含まれる糖質は消化されてブドウ糖などに分解され、血液中に取り込まれます。

血液中に入ったブドウ糖は血糖と呼ばれ、この血糖の濃度が血糖値と呼ばれます。

メモ
血糖値は血液1dL中にブドウ糖が何mg溶け込んでいるかで表します。このため血糖値は「mg/dL」という単位で表されます。

このように食事に含まれる糖質が消化・吸収されると血糖値が上昇しますが、健康な方であれば食後2時間程度で食前のレベルにまで低下します[1]。

この際に血糖値を下げるのが「インスリン」というホルモンです。

食事によって血糖値が上昇すると、それに反応して膵臓(すいぞう)からインスリンが分泌されます。

インスリンには、ブドウ糖をエネルギーとして細胞に取り込ませたり、余ったブドウ糖を脂肪などに合成して蓄えるはたらき促進したりする作用があります。

このためインスリンが正常にはたらかなくなると、血糖値が上昇したまま下がりにくくなります。

この状態が高血糖です。

高血糖はインスリンの分泌量が不足した場合と、インスリンが分泌されても効果が発揮できない場合に起こります。

インスリンの分泌量は膵臓の機能が低下すると減少します。

またインスリンの効果が発揮できない状態は「インスリン抵抗性」といい、肥満や運動不足、ストレスや脂質の多い食事などが要因となって起こります

高血糖が慢性的になった状態が「糖尿病」です。

糖尿病はインスリンをつくる細胞が何らかの原因により破壊される「1型糖尿病」、遺伝や生活習慣が発症に関わる「2型糖尿病」、妊娠中に起こる「妊娠糖尿病」、他の病気や薬により血糖値が上昇するその他のケースに分類されます。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

糖尿病の症状は?気付きにくい症状から恐ろしい合併症まで解説

糖尿病の予防のために、血糖値が高くなる兆候や、高血糖になった場合の症状を知りたい方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし軽度の高血糖では自覚できる症状はほとんどありません

このため気付かないうちに血糖値が上がり、自覚症状のないまま糖尿病と診断されるケースも少なくありません

また高血糖が重度になってくると、口の渇きや多飲、多尿、倦怠(けんたい)感、体重減少といった症状が現れることがあります。

こうした症状のある方は糖尿病である可能性が高いため、すぐに検査を受けてください。

さらに重度の高血糖になると意識障害や昏睡(こんすい)といった症状が現れることもあります。

糖尿病にはこのような高血糖に由来する症状に加え、多くの合併症が存在します

次の章では糖尿病が引き起こす合併症について詳しく解説します。

[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「食後高血糖

2.糖尿病の慢性合併症

血糖値の検査

「糖尿病って血糖値が高いだけじゃないの?」

「糖尿病の合併症では何が起こるんだろう……」

糖尿病は単に血糖値が上がるだけと考える方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし糖尿病には、高血糖に由来する症状以外にも「三大合併症」をはじめとした多くの慢性合併症が存在します

これらの合併症は、増え過ぎた血管中のブドウ糖が血管を破壊することによって起こります。

糖尿病の合併症は細い血管が傷つけられることで起こる「細小血管症」と、心臓や脳、足の血管が硬くなったり狭くなったりする「大血管症」に大別できます。

細小血管症は糖尿病に特有の合併症です。

代表的な細小血管症には「網膜症」「腎症」「神経障害」があり、これらを合わせて三大合併症と呼びます。

大血管症は「動脈硬化」によって生じる合併症のことです。

動脈硬化とは
動脈の血管が硬く厚くなり、弾力性が失われた状態のことです。

高血糖になるとブドウ糖が血管を破壊し、動脈硬化が起こります。

動脈硬化では血管が狭まり、詰まったり裂けたりしやすくなるためにさまざまな病気を引き起こします。

特に糖尿病による動脈硬化では、脳卒中や虚血性心疾患、末梢動脈疾患、足病変といった病気を発症するリスクが高まります。

なお足病変が重篤化した状態は足壊疽(えそ)と呼ばれます。

注意!
動脈硬化は高血糖だけではなく、加齢や肥満、高血圧、脂質異常症(血液中の脂質の異常)、運動不足、喫煙などによっても進行します。高血糖だけでなく他の要因にも注意が必要です。

糖尿病の合併症はいずれも数年から数十年かけてゆっくり進み、かなり重症にならないと症状に気付かないこともあります。

しかし症状がないからと放置していると命に関わる危険もあるため、定期的に合併症に関する検査を受けて医師の判断を仰ぐようにしましょう

メモ
糖尿病の三大合併症である網膜症、腎症、神経障害を症状の現れる「神経」「目」「腎臓」の頭文字を取って「しめじ」といいます。また、大血管症の足壊疽、脳卒中、虚血性心疾患はその頭文字を取って「えのき」と呼ばれます。

2-1.網膜症

糖尿病の網膜症は最小血管症の一つで、日本における失明の3番目に多い原因です[2]。

「網膜」の毛細血管が傷つくことで起こります。

網膜とは
眼球の奥(眼底)に薄く広がる神経組織の膜です。網膜に存在する視細胞が瞳孔から入ってきた光を感じ取り、それを視神経が電気信号にして脳に伝えます。

網膜には神経組織に酸素や栄養素を運ぶための毛細血管が張り巡らされています。

網膜症になるとこれらの毛細血管が損傷して詰まったり破れたりします。

網膜症は進行段階によって「単純性網膜症」「前増殖網膜症」「増殖網膜症」に分けられます

初期の単純性網膜症では、血管にこぶができて詰まったり血管の一部が破れて出血したりします。

この段階であれば血糖値のコントロールや薬による治療が有効です。

第二段階の前増殖網膜症では、より大きな出血が起こったり血管が詰まったりして、酸素や栄養素が行き渡らなくなります。

同時に詰まった血管に代わって脆く壊れやすい「新生血管」ができ始めます。

この段階では、レーザー光線で焼き固めることで新生血管の生成を防ぐ「光凝固」という治療が行われます。

網膜症が最終段階の増殖網膜症に至ると、新生血管が増殖して大量出血を繰り返します。

また新生血管の周囲に増殖膜が生じ、これに引っ張られることで網膜剝離が起こる場合もあります。

出血が少ない場合は光凝固ができますが、多い場合は外科手術が必要となります。

この段階に至ると治療は難しく、大幅な視力の低下や失明につながる危険もあります

網膜症は重症になるまで視力低下などの自覚症状がない場合が多いといわれています。

このため糖尿病の方は、特に自覚症状がなくても年に1回は眼科を受診し、網膜症の検査を受けることが推奨されています。

[2] 国立国際医療研究センター糖尿病情報センター「網膜症

2-2.腎症

糖尿病の腎症は細小血管症の一つで腎臓の「糸球体」という組織が傷つくことで起こります

メモ
腎臓は血管中の老廃物をろ過して尿をつくる臓器で、体内の水分量やミネラルの濃度を維持したり、血液や血圧、骨に関するホルモンをつくったりするはたらきも持ちます。糸球体は複雑な毛細血管の集合体からなる組織で、血液のろ過を担います。

腎症になると糸球体の毛細血管が損傷して構造が壊れます。

これによって腎機能が低下し、血液中の老廃物が正常に排出されない、「アルブミン」が尿中に漏れ出るといった異常が生じます。

アルブミンとは
血液中に含まれるたんぱく質の一種で、血管内に水分を保持するはたらきなどをしています。通常であれば糸球体を通過せず血液に戻されますが、糸球体が傷むとフィルターのようなはたらきが低下するため、アルブミンが尿中に漏れ出します。

糖尿病の腎症は人工透析治療の最大の原因疾患です。

人工透析とは
腎機能が著しく低下し、老廃物を適切に排出できなくなった際に透析器(ダイアライザ)という機械で腎臓のはたらきを代替する治療方法です。腎機能は回復できないため、一度人工透析を始めたら生涯にわたり継続する必要があります。

糖尿病腎症は進行段階によって五つの病期に分けられます。

第一期の「腎症前期」では自覚症状はなく、尿中からアルブミンも検出されません。

この段階の治療は主に血糖値のコントロールが行われます。

第二期の「早期腎症期」では尿中から微量のアルブミンが検出され、血圧も高くなりますが自覚症状はまだ現れません。

この段階では血糖値と血圧のコントロールに加え、腎臓に負担の掛かるたんぱく質の摂取制限も行われます。

この状態までであれば適切な治療によって回復が見込めるといわれています。

第三期の「顕性腎症期」では尿中からアルブミンが検出され、高血圧になります。

自覚症状がない場合が多いものの、むくみが現れることもあります。

この段階の治療では血糖値と血圧のコントロール、たんぱく質と塩分の摂取制限に加えて激しい運動の制限も必要となります。

この状態から回復できる可能性は半々程度とされています。

第四期の「腎不全期」では尿中からアルブミンが大量に検出され、高血圧やミネラルの異常なども見られるようになります。

自覚症状としてむくみや倦怠感が生じ、心不全のリスクも高まります。

この段階では血糖値と血圧のコントロール、たんぱく質と塩分、カリウムの摂取制限が行われ、運動も軽いものに制限されます。

しかしこの段階からの回復は困難だといわれます。

第五期の「透析期」では腎機能が著しく低下し、人工透析治療を行わなければ生きていけなくなります

血糖値と血圧のコントロール、たんぱく質と塩分、カリウムの摂取制限が行われ、運動や仕事、家事も体に負担の掛からないごく軽いものに制限されます。

しかしこの段階における治療では腎機能は回復できないため、人工透析治療は一生続けなければなりません

腎症は自覚症状のないまま進行することが多く、気付いたときには人工透析目前ということもあります。

腎症を早期発見するには定期的に「微量アルブミン尿検査」を受けることが重要です。

一般的な尿検査と同様、尿を採取して確認する簡単な検査であり、多くの医療機関で行うことができます。

2-3.神経障害

糖尿病の神経障害は細小血管症の一つで、高血糖の影響が「末梢神経」に及ぶことで起こります

末梢神経とは
脳や脊髄などの「中枢神経」から分かれ、全身の器官や組織に分布する神経のことです。末梢神経は痛さや触感、熱さ、冷たさなどを感じる「感覚神経」、筋肉を動かす「運動神経」、意識とは関係なく血圧や体温、内臓などのはたらきを調整する「自律神経」に大別できます。

具体的には、末梢神経に不必要な物質がたまったり、栄養を与える血管が傷ついて酸素や栄養素が行き渡らなくなったりすることが原因です。

神経障害は糖尿病の合併症として最も多く見られる疾患で、網膜症や腎症と違って早期の段階から自覚症状が現れることが特徴です。

糖尿病の神経障害では、障害の起こる神経によってさまざまな症状が現れます。

ここでは症状を神経ごとにご紹介します。

感覚神経に障害が起こると、両側の足先がじんじんとしびれたり痛んだりします

この症状は糖尿病の神経障害で最も特徴的なものとされています。

また痛みや温度に過敏になったり、逆に感覚が鈍くなってけがややけどに気付きにくくなったりします。

感覚が鈍くなると、気付かないうちに患部が壊死して切断が必要になる場合もあります。

また心臓の感覚神経に影響が出ると、心筋梗塞が起こっても痛みを感じない「無痛性心筋梗塞」に陥る可能性があります。

無痛性心筋梗塞は痛みを感じないため、すぐに気付けずに治療の機会を逸する危険があります

運動神経に障害が起こると、太ももやお尻の筋肉が萎縮したり筋力が低下したりします

また脚の変形や手脚の痛み、しびれが生じることもあります。

顔の筋肉をつかさどる顔面神経に影響が出ると、顔面神経麻痺(まひ)や眼球運動の障害が起こります。

自律神経に障害が起こると、血糖値や血圧、内臓や皮膚など広範囲に影響が及びます

食べ物の消化には自律神経が関わるため、胸焼けや吐き気、食欲低下、消化不良、便秘、下痢などが起こりやすくなります。

消化スピードが変化して食後血糖の上昇に影響が出ることから、血糖値のコントロールが乱れる原因になることもあります。

また血圧の調整が難しくなり、急に立った際に立ちくらみが起こる「起立性低血圧」になる場合があります。

膀胱(ぼうこう)や生殖器にも自律神経が関わるため、排尿障害や残尿、男性では勃起障害が起こりやすくなります。

さらに汗の分泌にも影響を与え、汗をかかなくなったり乾燥肌になったりします。

加えて、ふるえや冷や汗といった低血糖症状が自覚しにくくなり、血糖値が下がり過ぎて突然意識を失うこともあります。

糖尿病の神経障害は重症になると昏睡に陥ったり心拍が止まって急死したりする場合もあるため、早期の発見と治療が重要です。

2-4.脳卒中

脳卒中は大血管症の一つで、脳の血管の動脈硬化が進行して詰まったり破れたりする病気です。

糖尿病の合併症として起こる脳卒中には脳梗塞や脳出血があります。

脳梗塞は脳の血管が詰まって脳の組織に血流が行き渡らなくなる病気です。

脳梗塞になるとすぐに半身麻痺などの症状が現れる他、放置すると数時間で脳細胞が死んで元に戻ることはありません。

一方の脳出血は脳の血管が破れて出血する病気です。

流れ出た血液が脳細胞を圧迫することで脳の機能が障害され、出血した部位によって手足が動かしにくい、言葉が話しにくいといったさまざまな症状が現れます。

糖尿病の方では脳出血よりも脳梗塞が起こりやすいといわれています。

いずれの病気でも半身麻痺や感覚障害、言語障害などの症状が現れ、死亡する危険があります。

2-5.虚血性心疾患

虚血性心疾患は大血管症で、心臓の冠動脈が動脈硬化などの理由で狭くなったり詰まったりする病気です。

冠動脈とは
心臓を動かす心筋に血液を送る血管のことです。

糖尿病の合併症として起こる虚血性心疾患には狭心症と心筋梗塞があります。

狭心症は冠動脈が動脈硬化などで狭くなり、血流が悪化して心筋に必要な血液が不足する病気です。

胸に締め付けられたり押さえ付けられたりするような痛みを感じる他、左腕や背中、肩やみぞおちなどに痛みを感じることもあります。

心筋梗塞は動脈硬化によって冠動脈に血の塊(血栓)ができ、完全に詰まることで心筋への酸素と栄養が絶たれて心筋の一部が壊死する病気です。

胸などに激痛が生じ、呼吸困難や不整脈、吐き気、嘔吐(おうと)、冷や汗、顔面そうはくといった症状が起こることもあります。

また激しい不整脈によって突然死することもあります。

なお糖尿病の神経障害によって心臓の感覚神経が鈍ると、痛みを感じずに治療が遅れる危険があります

2-6.末梢動脈疾患

末梢動脈疾患は大血管症で、手足の血管で動脈硬化が進行して狭くなったり詰まったりする病気です。

メモ
末梢動脈疾患は、以前は「閉塞性動脈硬化症」や「下肢慢性動脈閉塞症」とも呼ばれていましたが、現在は国際的に末梢動脈疾患に統一されています。

特に足の血管に症状が出やすいといわれています。

末梢動脈疾患は進行段階に応じて4段階に分けられます。

第1段階の「軽度虚血」では足が冷たくなったりしびれたりします。

第2段階の「中等度虚血」になると、少し歩くと足の痛みやしびれで歩けなくなり、休むとまた歩けるようになる「間歇性跛行」という状態になります。

第3段階の「高度虚血」では歩かずにじっとしているときでも痛みが生じる「安静時痛」という状態になります。

この段階では夜に眠れないほどの痛みに襲われる場合もあります。

第4段階の「重症虚血」に至ると足の傷などがきっかけで潰瘍ができたり、組織が壊死してしまったりします。

壊死が起こった場合は傷が広がったり細菌に感染したりするのを防ぐため、患部を削り取ったり足を切断したりしなければならなくなる場合もあります

なお糖尿病の神経障害で感覚神経が鈍くなると、末梢動脈疾患による潰瘍や壊死の痛みにも気付きにくくなるため、手遅れになって切断に至りやすくなるといわれています

2-7.足病変

足病変は糖尿病を原因とする足のトラブルの総称です。

足病変には水虫や細菌の感染、足の変形やたこ、潰瘍などがあります。

またひどくなると足の組織が壊死して切断が必要になる場合もあり、これを「足壊疽」といいます。

足病変は主に糖尿病の神経障害や末梢動脈疾患の結果として生じます

神経障害になると感覚神経が鈍くなり、けがややけどに気付きにくくなることがあります。

これによりけがややけどに気付かないまま放置し、悪化させてしまう危険があります。

メモ
感覚神経の障害は神経の起点である脊髄から遠く、長い神経が高血糖の影響を受けやすい足で起こりやすいといわれています。

また運動神経に影響が出ることで足や足の指が変形し、歩くときなどに負担が掛かってたこや靴擦れができやすくなります。

さらに自律神経に影響が出ると発汗量が減って足の肌が乾燥して荒れやすくなる他、血流の低下も招きます。

一方、末梢動脈疾患によって足の血管で動脈硬化が進行して狭くなると、血流が悪くなってけがややけどの治りが悪くなります。

末梢動脈疾患が進んで足の細い血管が詰まると、その先の組織に潰瘍ができたり組織が壊死してしまったりする場合もあります。

こうした場合は死んだ細胞を削って取り除きますが、広範囲にわたって組織が壊死した場合は命を守るために足を切断することになります。

なお糖尿病患者は高血糖に伴って免疫機能が低下し、感染症にかかりやすく重症化しやすい状態になることがあります

こうなると荒れた肌や小さな傷などから水虫の菌や細菌などに感染しやすくなり、痛みやかゆみを感じないままに重症化する恐れがあります。

場合によってはガスを産生する細菌が傷口から侵入して筋肉が壊死する「ガス壊疽」や骨にまで炎症が及ぶ「骨髄炎」といった致命的な感染症に罹る危険もあります。

こうなると高い確率で足の切断が必要となります。

3.糖尿病の急性合併症

床に倒れているスーツの女性

糖尿病には何年もかけて進行する慢性合併症の他に、何らかの原因で異常な高血糖に陥り、命に関わる危険のある急性合併症があります。

高血糖の急性合併症には「糖尿病ケトアシドーシス」と「高浸透圧高血糖症候群」の2種類があります

この章ではそれぞれの急性合併症について詳しく解説します。

3-1.糖尿病ケトアシドーシス

糖尿病ケトアシドーシスはインスリン不足により血液が酸性になり、強い脱水症状に陥る合併症です。

エネルギーが不足すると体は脂質を分解してエネルギーを得ようとしますが、その過程で「ケトン体」という物質が増加します。

ケトン体が大量に蓄積すると通常は弱アルカリ性の血液が酸性に傾き、ケトアシドーシスと呼ばれる状態になります。

糖尿病ケトアシドーシスを発症すると急激に強いのどの渇きと頻尿、体重減少、吐き気、疲労といった症状が起こり、放置すると昏睡に陥り死亡する場合もあります

症状が出た際に吐いた息からフルーツのような甘い匂いがすることが特徴です。

糖尿病ケトアシドーシスの原因はインスリンによりブドウ糖を細胞に取り込めず、エネルギー不足になることです。

糖尿病ケトアシドーシスは1型糖尿病を発症した際やインスリンの治療を中断した際に起こります

またけがや感染症などによって一時的にインスリンの必要量が急激に増加した場合に起こることもあるといわれています

加えて、2型糖尿病の方が糖質を多く含む清涼飲料水を大量に飲み過ぎた際などにも発症する場合があります。

3-2.高浸透圧高血糖症候群

高浸透圧高血糖症候群は極端な高血糖と強い脱水症状が生じる合併症です。

症状としては強い喉の渇きや頻尿が見られる他、錯乱や眠気、昏睡、けいれん発作などが起こり、死亡する場合もあります

糖尿病ケトアシドーシスと違い最低限のインスリンは分泌されているため、ケトン体の増加は軽度にとどまります。

高浸透圧高血糖症候群は2型糖尿病の高齢患者に多く見られます。

肺炎や尿路感染症などの感染症、脳梗塞や心筋梗塞、急性膵炎など病気、手術のストレス、ステロイド薬や利尿薬などの薬剤、高カロリーの点滴などが原因で発症する場合があります。

4.糖尿病が疑われる場合は早急に受診しよう

聴診器を持って腕組をしている男性医師

血糖値はある日突然高くなるわけではなく、正常値から徐々に高くなっていきます。

このため、血糖値が糖尿病と診断される域に至る前に発見することで予防につなげることができます

また糖尿病と診断されるほど血糖値が高くなってしまった場合でも合併症の発症を防ぐことができます

とはいえ軽度の高血糖では症状が出ない場合も多く、合併症になって初めて糖尿病と分かるケースもあります。

定期的に健康診断を受けて糖尿病の早期発見に努めることが重要だといえるでしょう。

5.糖尿病の合併症についてのまとめ

糖尿病はインスリンの作用が不十分になることで、慢性的に血糖値が高い状態が続く病気です。

糖尿病にはインスリンをつくる細胞が破壊される1型糖尿病、遺伝的な要因や生活習慣によってインスリン抵抗性になる2型糖尿病、妊娠に伴って血糖値が高まる妊娠糖尿病などがあります。

糖尿病を放置すると、高血糖の影響で何年もかけて大小の血管が傷つき、慢性合併症が起こります

慢性合併症はいずれも命に関わったり、失明や腎不全、足の切断といった重い障害をもたらしたりする危険があります。

慢性合併症には細い血管が傷つくことで起こる細小血管症と、心臓や脳、足などの血管で動脈硬化が進むことで起こる大血管症があります

細小血管症は糖尿病に特有の合併症で、主なものに三大合併症と呼ばれる網膜症、腎症、神経障害があります。

大血管症には脳卒中、虚血性心疾患、末梢動脈疾患などがあります。

また糖尿病では神経障害や末梢動脈疾患の影響で足に細菌感染や組織の壊死が起こる場合が多いことから、糖尿病に由来する足のトラブルを足病変と総称します。

糖尿病では慢性合併症の他に、何らかの原因で極端な高血糖になることによる急性合併症が起こる場合があります

急性合併症には糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群があり、いずれも放置すると死亡する危険があります。

血糖値は正常値から徐々に高くなって糖尿病と診断される域に至りますが、高血糖でも自覚症状がないことが多いため、合併症になって初めて気付く方もいます。

このため定期的に健康診断を受け、糖尿病やその予兆を早期発見することが重要だといえます。

この記事を糖尿病の合併症にならないための参考にしてくださいね。