過労によって生じる症状とは?働き過ぎが心身に与える悪影響を解説
「最近、体調が良くないんだけど、もしかしたら働き過ぎかな?」
「働き過ぎると心身にどんな影響が出るんだろう」
と気になる方も多いのではないでしょうか。
疲労は「これ以上活動を続けると体に害が及ぶ」というサインと考えられています。
しかし、そのサインを無視したり見逃したりしていると過度な疲労、つまり「過労」にシフトしていくのです。
過労によって体に生じる症状には動悸(どうき)や息切れ、頭痛、倦怠(けんたい)感などがあります。
また思考力や集中力が低下し、気分の浮き沈みが激しくなるといった精神症状が現れることもあります。
最悪の場合、過労やストレスに起因する死である、「過労死」に至ることもあり得ます。
この記事では過労によって生じる症状や過労死について詳しく解説します。
疲労がたまっているときに心掛けたいポイントや、疲労の蓄積度を自己診断するためのチェックリストもご紹介しているので参考にしてくださいね。
1.過労とは
「過労ってどういう状態をいうんだろう?」
と気になっている方も多いかもしれません。
まずは過労の前段階とされている疲労の定義をご紹介しましょう。
日本疲労学会は疲労を「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う体の活動能力の減退状態」と定義しています。
また、疲労は「これ以上運動や仕事などを続けると害が及ぶ」という体のサインとも考えられています。
この体の声を無視し続けると、過度な疲労である「過労」に至ります。
基本的に疲労は原因になっている活動(運動や仕事)を中止し、休めば回復します。
しかし、過労は休んでもなかなか回復しない、根の深い疲労ということができます。
過労の定義はさまざまですが、「すぐに対策を立てる必要があるほど疲れている状態」とする考え方もあります。
いずれにしても放置して良い状態ではありませんね。
厚生労働省は働き過ぎによる過労を防ぐため、労働時間や休日に関するさまざまな取り決めをしています。
まず企業は原則として1日8時間、1週間に40時間を超えて労働者を働かせてはいけません[1]。
また労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える義務があります[1]。
さらに少なくとも毎週1日、もしくは4週間の間に4日以上の休日を与えなくてはいけません[1]。
時間外労働は労働者の過半数で組織する労働組合か、労働者の過半数を代表する者との労使協定において時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合に認められます。
また時間外労働には限度があり、無制限に定めることはできません。
そして厚生労働省は時間外・休日労働が月45時間を超え、長くなればなるほど、仕事と脳および心疾患の発症との関連性が高くなるとしています[2]。
このことからも働き過ぎが良くないことは、公然と認められた事実といえます。
[1] 厚生労働省「労働時間・休日」
[2] 厚生労働省「11月は「過重労働解消キャンペーン」期間です。」
2.過労によって生じる症状
過労になると心と体にさまざまな悪影響が生じます。
この章では過労によって生じる症状を身体症状と精神症状に分けて解説します。
2-1.身体症状
過労によって生じる身体症状には頭痛、胸の痛み、倦怠感、冷や汗、息切れ、手足のしびれなどがあります。
頭痛と倦怠感は風邪の代表的な症状でもありますが、働き過ぎることによっても現れる場合があります。
しかし、働き過ぎによって現れていた頭痛や倦怠感も、過労が続き免疫機能が低下することで、実際に風邪などの感染症にかかってしまうことがあるのです。
また女性の場合は、過労によるストレスが原因で自律神経やホルモンバランスが乱れ、月経不順や月経の異常が起こることがあります。
2-2.精神症状
過労になると精神的な症状も現れます。
過労によって生じる精神症状としては思考力や集中力の低下、気分の浮き沈み、不眠や過眠といった睡眠障害、食欲の極端な増減などが挙げられます。
通常、ヒトは疲れると眠くなりますが、働き過ぎているとストレスフルな状態から抜け出せなくなり、かえって眠れなくなってしまうことがあります。
また寝ても疲れがとれず、過眠になってしまうこともあります。
ストレスによって自律神経が乱れて食欲不振に陥るケース、その逆に必要以上に食べて過食になるケースもあるため注意が必要です。
人によってはアルコールの摂取量が増える場合があり、その他の健康障害を誘発する可能性も考えられます。
3.過労死とは
近年、過労死は社会問題として大きな関心を集めています。
過労死とは仕事による過労やストレスが一因となって、脳や心臓の病気、精神疾患などを発病し死亡に至ることです。
また、過労を苦にして自殺してしまうことを「過労自殺」といいます。
過労死に至る理由はさまざまですが、この章では過労死や過労自殺に至るパターンを「労災」という観点から見ていきます。
過労死が労災と認められるかについては明らかに業務によって肉体的・心理的負荷を受けたかどうか、という点が基準になります。
過労と死因の関連性が強く、過重負荷を受けたことにより脳や心臓の病気、精神疾患などを発病し死亡に至ったと認められれば、過労死と認めるとされています。
3-1.脳や心臓の病気による過労死
脳や心臓の病気による過労死で労災と認められる可能性があるものには脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、「高血圧性脳症」、心筋梗塞、狭心症、「解離性動脈瘤」などがあります。
このような脳や心臓の病気には血管の「動脈硬化」が深く関わっています。
動脈硬化は加齢とともに進むため、年をとるにつれて脳や心臓の病気にかかりやすくなるのは自然なことです。
しかし過労によって睡眠時間が減少したり、過度のストレスを感じたりすると通常よりも早く動脈硬化が進みます。
結果として血管が詰まりやすくなり、脳や心臓などの病気を発症するリスクが高まります。
心筋梗塞や脳梗塞などは、発症後すぐに治療しなければ死亡するケースが多いのも特徴です。
3-2.精神疾患による過労死
「うつ病」などの精神疾患による過労自殺も労災として認められることがあります。
働き過ぎてうつ病を発症した結果、思考力や集中力の低下、食欲の極端な増減や睡眠障害などに見舞われ、自殺に至るケースもあります。
うつ病などの精神疾患の場合、仕事で強いストレスがかかり、それによって精神に異常を来したという因果関係が認められるかどうかが重要です。
うつ病になる要因としては仕事の失敗や重過ぎる責任、役割や地位の変化、職場の対人関係のトラブル、パワーハラスメントなど、さまざまなものが考えられます。
3-3.その他の病気による過労死
喘息(ぜんそく)やてんかん、「十二指腸潰瘍」などによる死亡も労災として認められることがあります。
厚生労働省は脳と心臓の病気、精神疾患について過労死の認定基準を設けています。
しかし、それ以外の疾患でも仕事との関連性が認められれば労災になることがあります。
例えば喘息はアレルギーだけでなく、過労による体力の消耗、免疫機能の低下、肉体的・精神的ストレスなどが重なって発症・悪化する場合があります。
また十二指腸潰瘍も、ストレスによって自律神経が乱れ、胃酸が過剰分泌されることが原因になり得ます。
過労死を防ぐには、まず自身の疲労がどれくらいたまっているのか知ることが必要です。
次の章では、自身の疲労の蓄積度を確認するための自己診断チェックリストをご紹介します。
4.疲労蓄積度自己診断チェックリスト
「どの程度疲れがたまっているか、確認する方法ってないのかな?」
疲労の蓄積度を客観的に知ることができたら便利ですよね。
厚生労働省は疲労蓄積の度合いを自覚症状と勤務状況から判定する「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)」を公開しています。
労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)
自覚症状と勤務状況に関する質問に答えていき、合計得点を参照することで客観的に見て自分がどのくらい疲れているかが分かります。
気になる方はぜひ一度試してみてください。
5.疲労がたまっているときに心掛けたいポイント
疲労が蓄積して過労に至ると、休んでもなかなか疲れが抜けなくなります。
そのため、この章では過労になる前に、たまった疲労を回復させるためのポイントを六つご紹介します。
ポイント1 十分な睡眠をとる
疲労を回復するには十分な睡眠をとることが重要です。
ヒトは起きている間に生じた疲れを解消するために眠ります。
そのため睡眠は疲労から回復する手段として最も根本的なものといえます。
適切な睡眠時間には個人差がありますが、まずは疲労が解消できる程度の時間を確保することを意識しましょう。
良質な睡眠をとるには長さだけでなく、質にこだわることも重要です。
規則正しい生活を心掛け、毎日同じ時間に寝起きすると「体内時計」がうまく機能するため質の良い睡眠がとれます。
質の良い睡眠がとれたかどうかは、睡眠で休養がとれている感覚(睡眠休養感)が一つの目安です。
睡眠時間だけでなく、睡眠の質にも注目して疲労解消に努めてくださいね。
質の良い睡眠のとり方については以下の記事で詳しくご紹介しています。
睡眠のサイクルを整えるには?眠りのメカニズムと快眠のコツを解説
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「体内時計」
ポイント2 体に必要な栄養素を十分に摂る
疲労を回復するには体に必要な栄養素を十分に摂ることも重要です。
特にたんぱく質や「ビタミンB群」、鉄分を意識的に摂ると良いでしょう。
肉に含まれる動物性たんぱく質は筋肉を修復する役割を持つ上、精神的な疲れにも効果があるとされています。
ビタミンB群は脂質、糖質、たんぱく質をエネルギーに変換する役割を担っているため、不足すると疲労感や倦怠感が生じます。
ビタミンB群には8種類の栄養素がありますが、豚肉やレバー、たらこ、納豆などは複数のビタミンB群の摂取源になります。
また鉄分は全身に酸素を運搬するのに必要な栄養素であるため、体力維持のために必要不可欠です。
鉄分はレバーやアーモンド、小松菜などに多く含まれます。
たんぱく質、ビタミンB群、鉄分はそれぞれ以下の記事で詳しくご紹介しています。
タンパク質とは?体内でのはたらきや食事摂取基準、豊富な食品を紹介
ビタミンB群を豊富に含む食べ物は?8つのビタミンの摂取源を紹介
鉄分とは?はたらきや食事摂取基準、多く含まれる食品などを紹介
ポイント3 湯船にしっかりつかる
湯船にしっかりつかることにも疲労回復効果が期待できます。
湯船につかると血行が促され、筋肉や関節がやわらかくなります。
また水圧が血液やリンパの流れを促進し、疲労物質や老廃物が流れやすくなります。
そのためしっかり湯船につかった方が、シャワーを浴びただけのときと比べて疲れがとれやすいのです。
さらに適切な入浴には睡眠の質を高める効果があるとされています。
睡眠の質を高めるには、就寝する2〜3時間前に入浴すると良いでしょう[4]。
そうすると体温が一時的に上がり、寝床に就く頃にちょうど下がり始めます。
脳の温度が下がるときには眠気が生じやすいため、結果として寝付きが良くなるのです。
またお湯は38〜40度程度の熱過ぎない温度に設定しましょう[5]。
42度以上のお湯につかると「交感神経」が刺激され、眠りが阻害されてしまいます[5]。
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
[5] 東京都保健医療局「心身の疲労を解消しましょう」
ポイント4 お酒を飲み過ぎない
ストレス発散や疲労回復のためにお酒を飲むことはおすすめできません。
お酒を飲み過ぎると本来アルコールを分解する「酵素」だけでは分解が追いつかなくなります。
するとビタミンB1を必要とする酵素がはたらきだし、ビタミンB1の必要量が高まることで不足が起こります。
ビタミンB1は、脳や心臓、筋肉の主要なエネルギー源となる糖質のエネルギー合成をサポートするはたらきがあるため、疲労回復には欠かせない栄養素です。
結果としてエネルギーを生み出すのに必要なビタミンB1が不足し、疲れやすくなるのです。
また睡眠薬代わりにアルコールを摂取する、いわゆる「寝酒」は睡眠の質を下げます。
アルコールははじめのうちこそ寝付きを良くしますが、それが続くと体が慣れてしまい、効果が薄くなります。
さらに睡眠の質自体も低下し、目が覚める回数が増えてしまいます。
寝酒を続けるとアルコール依存症になってしまうこともあるため注意が必要です。
お酒は適量をたしなみ、寝酒は控えましょう。
ポイント5 深呼吸する
根を詰めて作業しているときは意識的に深呼吸をするのがおすすめです。
深呼吸は自律神経のはたらきを整え、副交感神経を優位にします。
そのため緊張や興奮が和らぎ、リラックスすることができます。
また酸素が全身に行き渡るため血行が良くなり、筋肉がほぐれます。
具体的な深呼吸のやり方は以下のとおりです。
背すじを伸ばし、鼻からゆっくり息を吸います。
このとき、おへその下に空気をためるイメージでおなかを膨らませるのがポイントです。
ためた空気は吸ったときの倍の時間をかけて口からゆっくり吐き出しましょう。
ポイント6 軽い運動を行う
軽い運動を行うと寝付きが良くなるため、疲労回復に役立ちます。
特に寝る3時間ほど前に運動をすると、就寝時にちょうど体温が下がるので寝付きが良くなります[6]。
一時的に体温を上げることで眠気を発生させるメカニズムは入浴と同じです。
激しい運動はかえって眠りを妨げることがあるため、負荷の軽い「有酸素運動」を行うと良いでしょう。
また習慣的に運動をしている人には不眠が少ないことが分かっています。
ただし、仕事や運動による疲れも、同じ疲れであることに変わりはないため、無理をしないことが大切です。
運動もできないほど疲れているときは、体を休めることを優先しましょう。
6.過労の症状が見られる場合は医療機関を受診しよう
過労が原因だと思われる症状が見られるときは早急に医療機関を受診しましょう。
その際には最もつらいと感じる症状に合わせて受診する科を選ぶと良いですよ。
動悸や胸の痛みであれば循環器科、呼吸に異常があるなら呼吸器内科、気分の浮き沈みや不眠に悩まされているなら心療内科や精神科に行くことをおすすめします。
受診することを面倒と思わず、しっかり医師の診断を受けてください。
つらい症状が和らぐとともに、自身の病状について詳しく知る機会が得られます。
7.過労によって生じる症状についてのまとめ
過労とは「これ以上運動や仕事などを続けると害が及ぶ」という体のサインを無視し続けると至る過度の疲労のことです。
過労になると心身にさまざまな症状が現れます。
具体的には頭痛、胸の痛み、倦怠感、冷や汗、息切れ、手足のしびれの他、思考力や集中力の低下、気分の浮き沈み、不眠や過眠といった睡眠障害、食欲の極端な増減などが挙げられます。
また過労が深刻化すると脳梗塞や心筋梗塞、うつ病などの発症リスクが高まります。
場合によっては過労死に至ることもあるため、注意が必要です。
厚生労働省は疲労蓄積の度合いを自覚症状と勤務状況から判定する「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)」を公開しているので、気になる方はチェックしてみると良いでしょう。
疲労を回復し、過労に至るのを防ぐには十分な睡眠をとり、必要な栄養素をしっかり摂取することが重要です。
また湯船にしっかりつかる、お酒を飲み過ぎない、軽い運動を行うといったことを習慣づけると疲労回復に役立ちます。
根を詰めて仕事をしたときは深呼吸をすると体の状態を整えることができますよ。
過労が原因と思われる不調が現れた際には無理をせず、医療機関に受診することをおすすめします。
過労を防ぎ、たまった疲労を回復するためにぜひこの記事を役立ててくださいね。