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フレイルとは?特徴や症状、早期発見・予防のためのポイントを解説

「フレイルって何だろう?」

このように気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。

フレイルとは、加齢により心身の機能や社会性が衰えた状態のことです。

フレイルはさまざまな病気が重なったり、老化が進んだりすることで起こるといわれています。

フレイルを放置していると介護が必要な状態へと進行する恐れがあるため、早期に発見し適切に対応していくことが重要です。

この記事ではフレイルの特徴や原因に加え、フレイルの発見のためのチェック方法、予防・改善のポイントを詳しく解説します。

フレイルが不安な方はぜひ参考にしてくださいね。

1.フレイルとは

ソファに座る高齢女性

フレイルとは、加齢により心身の機能および社会性が老い衰えた状態のことです。

一つの原因や異常による病気ではなく、さまざまな病気の発症や悪化、筋肉の衰え、老化の進行などが見られる状態です。

英語の「Frailty(フレイルティー)」が語源で、「虚弱」や「老衰」、「脆弱(ぜいじゃく)」を意味します。

また、フレイルより手前の軽い状態を「プレフレイル」といいます。

フレイルは活動的な生活をしている状態(健常)と、要介護状態の中間の段階です。

多くの場合、高齢になるにつれて筋力や体力が衰え、定年退職や人との交流が薄れることなどによって、心身や社会性にダメージを受けた際に回復が難しくなります。

さらにさまざまな病気の進行などが重なると「生活機能」が低下し、介護が必要な状態へ移行します。

生活機能とは
人が生きていくために必要な機能全体のことです。歩行や移動、食事、着替え、入浴、排せつなどの基本的な日常生活動作の他、交通機関の利用や電話の応対、買い物、食事の支度、家事、洗濯、服薬管理、金銭管理などがあります。

この章では、フレイルの分類や診断基準について詳しく解説します。

1-1.フレイルの分類

フレイルは、大きく「身体的フレイル」「社会的フレイル」「精神・心理的フレイル」に分類されます

身体的フレイルは、加齢に伴う筋力の低下や運動機能の障害などによって、日常生活を送るために必要な身体能力が衰える状態です。

社会的フレイルは、外出の減少や一人暮らしなどにより社会とのつながりが希薄になり、独居や経済的な困窮などに陥った状態を指します。

精神・心理的フレイルは、定年退職やパートナーを失うことで、認知機能低下やうつ状態などが現れることをいいます。

これらのフレイルが連鎖して起こることで老化(自立度の低下)が進行し、要介護状態に陥るリスクが高まります

その他、加齢によって口腔機能が低下する状態は「オーラルフレイル」と呼ばれます。

オーラルフレイルでは食べにくさやしゃべりにくさ、歯並びの乱れや口臭などが現れます。

そのため十分な栄養を摂ることができないばかりか、人との交流を避けることにつながり、心身や社会性に悪影響を及ぼします

1-2.フレイルの診断基準

日本の医療機関では、フレイルの診断に「日本版CHS基準(J-CHS基準)」が用いられます

フレイルには疲れやすくなる、活動量が少なくなる、筋力が低下する、動作が遅くなる、体重が減るといった特徴があります。

日本版CHS基準では、以下のような評価基準でフレイルに該当するかを診断します。

【日本版CHS基準(J-CHS基準)】
項目 評価基準
体重減少 6カ月で、2kg以上の(意図しない)体重減少
筋力低下 握力が男性で28kg未満、女性で18kg未満
疲労感 ここ2週間以内で、わけもなく疲れたような感じがする
歩行速度 通常歩行速度が1.0m/秒未満
身体活動 1.軽い運動・体操をしていますか?
2.定期的な運動・スポーツをしていますか?
上記の二つのいずれにも「週に1回もしていない」と回答

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター「日本版CHS基準(J-CHS基準)」をもとに執筆者作成

一つまたは二つに該当した場合はプレフレイル、三つ以上に該当した場合はフレイルだとされます

また、いずれも該当しない場合は健常と判断されます。

2.フレイルに類似する概念

椅子に座ったまま肩をおさえて杖をついた高齢者

フレイルに類似する概念に「ロコモティブシンドローム」と「サルコペニア」があります。

この章ではそれぞれの概念について解説します。

2-1.ロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは「運動器」の障害により、立ったり歩いたりなどの移動機能が低下した状態のことです。

運動器とは
骨や関節、筋肉、腱、靱帯(じんたい)、神経といった体を動かすのに関わる体の組織や器官のことです。

運動器の障害には、骨がもろくなる「骨粗しょう症」や骨折などの病気、加齢に伴う筋力や体力の低下などがあります。

骨粗しょう症とは
骨代謝のバランスが崩れ、もろく折れやすくなった状態のことです。骨は、骨芽細胞によって骨がつくられる「骨形成」と、破骨細胞によって骨が破壊される「骨吸収」によって常に新しくつくり直されています。骨吸収が上回った状態が続くと骨粗しょう症を発症します。

フレイルが身体的・精神的・社会的な問題を含む包括的な概念であるのに対し、ロコモは運動器の障害に焦点を絞っています

また、フレイルが高齢者を主な対象としているのに対し、ロコモは若年層を含めた幅広い年齢層における運動器の軽度の機能低下と診断されるのが特徴です。

ロコモもフレイルと同様、進行すると要介護のリスクが高まります

ロコモについては以下の記事で解説しています。

ロコモティブシンドロームとは?症状や原因、予防のポイントを解説

2-2.サルコペニア

サルコペニアとは、加齢による筋肉量の減少、筋力の低下が見られる状態のことです。

フレイルが心身の機能や社会性にも衰えが見られる状態のことを指すのに対し、サルコペニアでは身体機能の低下が重視されます。

筋肉量の減少は25~30歳頃から始まり、加齢とともに進行するといわれています[1]。

サルコペニアは加齢が主な原因とされており、活動量の低下や栄養不足も危険因子です。

サルコペニアについては以下の記事で解説しています。

サルコペニアとは?ロコモやフレイルとの違い、予防・改善のポイント

フレイル、ロコモ、サルコペニアには重複する部分が多く、いずれも進行することで要介護状態の危険性が高まるため、早期に発見し対策することが重要です。

[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「サルコペニア

3.フレイルになりやすい人の特徴

高齢者の手

「フレイルになりやすい人っているのかな?」

このように気になる方もいらっしゃいますよね。

フレイルになりやすい人の特徴を見ていきましょう。

3-1.低栄養

低栄養ではフレイルのリスクが高まります

低栄養とは
栄養素の摂取量が体の必要量より少ないときに起こる体の状態のことです。体重が低下する、筋肉が減少する、記憶力や集中力が低下する、風邪や炎症が治りにくい、骨折しやすいといった症状が現れます。

ヒトが健康的に生きていくためには、十分に栄養素を摂取する必要があります。

一般に高齢になると食べる量が少なくなり、あっさりしたものや軟らかいものを好むようになるため、摂取する栄養素に偏りが生じやすくなります。

このような食生活を長く続けると、低栄養のリスクが高まります。

低栄養が続くと筋肉量が減少し、活動量が低下します。

これに伴って食欲が低下するため、低栄養がさらに進行してしまうのです。

このような悪循環により、要介護の状態になる可能性があるため注意が必要です。

3-2.痩せ過ぎ

痩せ過ぎではフレイルのリスクが高まります

高齢者のフレイルのリスクは痩せ過ぎで上昇し、さらに「BMI」が低いほど死亡リスクが高まると分かっています。

BMIとは
肥満や低体重(やせ)の判定に用いる体格指数です。[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出されます。BMIが22になる体重が標準体重であり、最も病気になりにくい状態であるとされています。

BMIでは18.5未満が「低体重(やせ)」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」とされます。

加齢による筋肉量の減少や、食事量の低下などによって痩せ過ぎるとサルコペニアを招き、体力が低下することでフレイルに進行します。

この他にも、高齢者で極端に体重が減少する場合には別の病気が隠れていることがあるため注意が必要です。

がん、胃や腸などの病気による消化・吸収不全、「糖尿病」による糖代謝障害などによって体重減少が見られることがあります。

糖尿病とは
インスリンというホルモンの不足や作用低下が原因で、高血糖が慢性的に続く病気です。インスリンには、食事によって取り込まれたブドウ糖を細胞に取り込んでエネルギーとして利用するはたらきがあります。この作用が低下するとブドウ糖が細胞に取り込まれず、体重減少などが現れます。

このように、さまざまな要因で体重が極端に減少するとフレイルのリスクが高まるため注意しましょう。

3-3.肥満

肥満ではフレイルのリスクが高まります

肥満は、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることによって起こります。

「生活習慣病」の要因になる他、家事や買い物といった日常的な活動量の低下、うつ症状を招くといわれています。

生活習慣病とは
食事や運動などの生活習慣が発症の要因となる病気の総称です。肥満や高血圧、糖尿病などがあります。

また近年では、筋肉が減少するサルコペニアと肥満が重なって起こる「サルコペニア肥満」が問題になっています。

サルコペニア肥満は通常の肥満よりも生活習慣病を招きやすいといわれています。

運動能力が低下するため転倒や骨折を起こしやすくなり、要介護のリスクが高まります。

サルコペニアも肥満同様フレイルの危険因子であるため、サルコペニア肥満に対しても注意が必要です。

4.早期発見のための「フレイルチェック」

「フレイルはどうやって確認できるの?」

このように気になる方もいらっしゃいますよね。

この章ではフレイルのチェック方法をご紹介します。

簡易チェックは自分で行うことができるので、ぜひ参考にしてくださいね。

4-1.簡易チェック

簡易チェックでは体や心の状態を確認できると共に、今後の生活で気をつけるべきポイントを知ることができます

簡易チェックは、ふくらはぎを両手でつくった輪で囲む「指輪っかテスト」と「イレブンチェック」で構成されています。

それでは、指輪っかテストの手順をご紹介します。

「指輪っかテスト」では筋肉量を確認することができます

指輪っかテスト

まずは両手の親指と人差し指で輪をつくリます。

利き足ではない足のふくらはぎの一番太いところを囲みましょう。

「囲めない」「ちょうど囲める」「隙間ができる」のどちらに当てはまるか確認してください。

囲めない、ちょうど囲めるの場合は筋肉量が十分である可能性が高く、隙間ができる場合は筋肉量が少ない可能性が高いとされています。

次に、イレブンチェックをご紹介します。

イレブンチェックでは身体的、精神的、社会的の三つの面を評価することができます

以下の項目に対して、「はい」か「いいえ」で回答してください。

【イレブンチェック】

  1. ほぼ同じ年齢の同性と比較して健康に気を付けた食事を心掛けていますか
  2. 野菜料理と主菜(お肉またはお魚)を両方とも毎日2回以上は食べていますか
  3. 「さきいか」「たくあん」くらいの固さの食品を普通に噛み切れますか
  4. お茶や汁物でむせることがありますか
  5. 1回30分以上の汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施していますか
  6. 日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上実施していますか
  7. ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速いと思いますか
  8. 昨年と比べて外出の回数が減っていますか
  9. 1日に1回以上は、誰かと一緒に食事をしますか
  10. 自分が活気にあふれていると思いますか
  11. 何よりまず、物忘れが気になりますか

(1)(2)の項目に「いいえ」が多い方は栄養面で、(3)で「いいえ」、(4)で「はい」の方は、口の健康の面で注意が必要です。

また(5)(6)(7)の項目に「いいえ」が多い方は身体活動、(8)(11)が「はい」、(9)(10)が「いいえ」の方は社会参加の面が要注意とされます。

4-2.総合チェック

総合チェックでは体の健康、口の健康、社会性、精神面の状態について詳しく評価することができます

総合チェックは主に自治体などで実施されています。

総合チェックでは、簡易チェックの内容に加え以下のような深掘りチェックが行われます。

深掘りチェックには口の健康をチェックする滑舌検査、サルコペニアのリスクを調べる握力計測、足腰の筋力とバランスを調べるための、椅子を使った立ち上がり動作の確認などがあります。

さらに普段の生活状況については質問票で確認します

口の健康に関しては、普段の食事の様子や食べづらさ、しゃべりづらさの有無などを調査します。

社会性や精神面の状態に関しては、人付き合いや仕事・老人クラブへの入会の有無の他、日々の生活での不安や物忘れの有無などを確認します

総合チェックは簡易機器を用いて計測する項目があることや、安全面に考慮してフレイルサポーターという方の協力の元、実施されます。

このように総合チェックをすることによって、今の心身の状況やフレイルのリスクを詳しく確認することができます

フレイルの早期発見や予防のために日常生活で気をつけるポイントを明確にすることができますよ。

5.フレイルを予防するためのポイント

手すりを持ちながら階段をおりる高齢女性

「フレイルを予防するためにはどうしたら良いのかな?」

このように気になる方もいらっしゃいますよね。

フレイルを予防するためには「栄養(食・口腔機能)」「運動」「社会参加」へのアプローチが重要です。

若い人でも、痩せや筋力低下などを放置することよってフレイルのリスクが高まります。

フレイルを予防するには、働き盛りの若いうちからの取り組みが大切です。

フレイルを予防するためのポイント

ポイント1 カロリーを適切に摂取する

フレイルを予防するには過不足なく適切にカロリーを摂取することが重要です。

摂取カロリーが適切でない場合、肥満や痩せ過ぎが起こります。

「1日にどのくらいのカロリーを摂ると良いんだろう?」

と疑問に思った方もいらっしゃるでしょう。

1日に摂るべき総エネルギー(カロリー)量は年齢や性別、「身体活動レベル」によって異なります。

身体活動レベルとは
推定エネルギー必要量の算定に使われる指標で、体を動かす程度によって分類されます。生活の大部分を座って過ごしている場合は「低い(Ⅰ)」、座っていることが多いが、立った状態での作業や徒歩移動、家事、軽いスポーツなどをしている場合は「普通(Ⅱ)」に該当します。歩いたり立ったりしている時間が長い場合、あるいは活発な運動習慣がある場合は「高い(Ⅲ)」です。

個々の身体活動レベルに照らし合わせて1日の推定エネルギー必要量を見ていきましょう。

【推定エネルギー必要量(kcal/日)】
性別 男性 女性
身体活動レベル 低い 普通 高い 低い 普通 高い
1〜2歳
-
950
-
-
900
-
3〜5歳
-
1,300
-
-
1,250
-
6〜7歳
1,350
1,550
1,750
1,250
1,450
1,650
8〜9歳
1,600
1,850
2,100
1,500
1,700
1,900
10〜11歳
1,950
2,250
2,500
1,850
2,100
2,350
12〜14歳
2,300
2,600
2,900
2,150
2,400
2,700
15〜17歳
2,500
2,800
3,150
2,050
2,300
2,550
18〜29歳
2,300
2,650
3,050
1,700
2,000
2,300
30〜49歳
2,300
2,700
3,050
1,750
2,050
2,350
50〜64歳
2,200
2,600
2,950
1,650
1,950
2,250
65〜74歳
2,050
2,400
2,750
1,550
1,850
2,100
75歳以上
1,800
2,100
-
1,400
1,650
-

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

例えば身体活動レベルが「普通」に該当する65〜74歳の女性の場合、1日の推定エネルギー必要量は1,850kcalです[2]。

肥満や痩せ過ぎはフレイルのリスクになるため、適切なカロリー摂取を心掛けましょう。

[2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

ポイント2 たんぱく質を十分に摂取する

フレイルを予防するには、十分なたんぱく質を摂取する必要があります

たんぱく質は、エネルギー源となる栄養素の一つです。

また筋肉や臓器、皮膚、髪の毛など体の組織を構成する材料になるはたらきで知られています。

筋肉は分解と合成を繰り返されており、たんぱく質が不足すると分解のはたらきが合成のはたらきを上回ってしまうため、筋肉量が低下し、フレイルやサルコペニアのリスクが高まる恐れがあります

他に、たんぱく質にはホルモンや抗体などの体の機能を調節する物質の成分となるはたらきがあります。

抗体とは
体内に入ったウイルスや細菌などを体外へ排除しようとするたんぱく質のことです。

このためたんぱく質が欠乏すると、成長障害が起こったり体力や「免疫機能」が低下したりします。

免疫機能とは
細菌やウイルスなどから体を守る仕組みのことです。

たんぱく質の欠乏は、食事摂取量が低下した高齢者で起こりやすいため特に注意が必要です。

フレイルを予防するためには、1日に体重1kg当たり1.0〜1.2gのたんぱく質を摂ることが推奨されています[3]。

また、すでにフレイルの場合には、1日に体重1kg当たり1.2〜1.5gのたんぱく質の摂取が望まれます[3]。

たんぱく質は肉類や魚類、卵類や豆類などに豊富に含まれているため、普段の食事に意識的に取り入れてくださいね。

[3] 日本医学会連合 領域横断的なフレイル・ロコモ対策の推進に向けたワーキンググループ「「フレイル・ロコモ克服のための医学会宣言」解説

ポイント3 ビタミンDを十分に摂取する

フレイルを予防するには、ビタミンDを十分に摂取することが大切です。

ビタミンDは、「カルシウム」の吸収を促すはたらきをする栄養素です。

カルシウムとは
ヒトの体に最も多く含まれるミネラルで、骨や歯を構成する物質です。

高齢者においてビタミンD不足が長く続くと、骨粗しょう症や骨折のリスクが高まるといわれています。

骨粗しょう症によって骨折すると、体を動かすことが難しくなり筋力の低下を招きます。

それによってサルコペニアやロコモティブシンドロームに陥り、フレイルのリスクが高まる危険性があります。

ビタミンDは、しらす干しや鮭、いくら、まいたけ、うなぎなどから摂ることができます。

骨粗しょう症を予防するにはビタミンDの他、骨の材料となるカルシウムやマグネシウム、丈夫な骨をつくる助けとなるビタミンKやビタミンB群なども十分に摂取しましょう。

骨粗しょう症の予防については以下の記事で詳しく解説しています。

骨粗しょう症を予防するには?積極的に摂るべき栄養素や運動法を紹介

ポイント4 筋力トレーニングを行う

フレイルを予防するには、筋力トレーニングを行うことが重要です。

運動不足では筋力や体力が低下するだけでなく、外出がおっくうになったり食欲が低下したりします。

そうすると低栄養状態や身体機能の低下を招き、フレイルやサルコペニアを引き起こしやすくなります。

筋力トレーニングは肥満や食欲低下などの改善、筋力向上などの効果があるため、フレイルやサルコペニアの予防に効果的です。

また骨に適度に負荷がかかることで、骨の代謝が活発になり骨粗しょう症を予防する効果も期待できます。

フレイル予防には「スクワット」や「ランジ」がおすすめです。

これらの運動は10回を目安に、ややきついと感じる程度でゆっくり行いましょう[4]。

まずはスクワットの手順について解説します。

スクワット

まず、椅子の背もたれ部分を両手でつかんで立ち、足を肩幅くらいに広げます。

そしてお尻をゆっくり下に下ろします。

このとき背中が曲がったり、踵が浮いたりしないように注意しましょう

太ももに力が入っていることを感じながら、ゆっくり元の体勢に戻ります。

この動作を繰り返します。

次にランジの手順をご紹介します。

ランジ

まず立った状態から片足を前に踏み込みます。

前に出した足に体重をかけてから、元の体勢に戻ります。

反対の足も同様に行いましょう。

筋肉トレーニングは体調が悪いときや痛みを感じる場合には避け、少しずつ時間を長くするようにしてくださいね。

[4] 厚生労働省「口腔機能・栄養・運動・社会参加を総合化した複合型健康増進プログラムを用いての新たな健康づくり市民サポーター養成研修マニュアルの考案と検証 (地域サロンを活用したモデル構築)を目的とした研究事業

ポイント5 有酸素運動を行う

フレイルを予防するには、筋力トレーニングと併せて「有酸素運動」を行うことが望ましいとされています。

有酸素運動とは
酸素と共に糖質や脂質をエネルギー源とする比較的負荷の軽い運動のことです。ウォーキングやジョギング、水泳などが該当します。

筋肉トレーニングに比べて負荷が軽いため、気軽に始めやすい運動といえます。

有酸素運動には脂肪燃焼効果があるため、フレイルだけでなく肥満や高血圧などの生活習慣病の予防・改善も期待できますよ。

有酸素運動のなかでもウォーキングは、高齢者でも比較的取り組みやすい運動です。

ウォーキングのコツ

ウォーキングの際には背筋を伸ばし、前を見て、姿勢良く歩くようにしましょう。

踵から地面について、爪先で地面を蹴るようにして歩くことで歩幅を大きくすることができます。

フレイルを予防するためには普段より10 分長く体を動かし、少し速く歩くよう意識すると良いといわれています[5]。

また、運動は一緒に取り組む仲間がいたり、誰かに会う目的があったりすることで継続しやすくなります。

高齢者が社会から孤立することは社会的フレイルに当たるため、地域のコミュニティーに参加して一緒に運動する仲間を見つけたり、外出する目的を見つけたりすると良いですよ。

[5] 厚生労働省「口腔機能・栄養・運動・社会参加を総合化した複合型健康増進プログラムを用いての新たな健康づくり市民サポーター養成研修マニュアルの考案と検証 (地域サロンを活用したモデル構築)を目的とした研究事業

ポイント6 生活習慣病を予防・治療する

生活習慣病がある場合、その持病を適切に治療・コントロールすることもフレイル予防において重要です。

生活習慣病には高血圧や肥満、糖尿病などがあり、治療しないままでいるとフレイルのリスクが高まるといわれています。

生活習慣病は「動脈硬化」の危険因子であり、進行することで脳卒中や心臓病などを招く恐れがあります。

動脈硬化とは
動脈の血管が硬くなって弾力性が失われた状態のことです。加齢や肥満、運動不足、高血圧などが重なることで発症しやすくなるといわれています。

脳卒中や心臓病は死亡リスクがあるだけでなく、後遺症で病前のような生活が送れなくなったり、介護が必要になったりする可能性もあります。

生活習慣病を予防することはもちろん、悪化を防ぐことがフレイルの予防につながるのですね。

ポイント7 口内の健康を保つ

フレイル予防には、口内の健康を保つことも重要だといわれています。

オーラルフレイルは滑舌が悪くなる、噛めない食べ物が増える、歯並びが乱れる、口臭があるといった、口腔機能の低下した状態です。

このような状態のせいで周囲の方とのコミュニケーションや外食がおっくうになり、社会とのつながりを避けるようになることがあります。

孤立することが多くなると、うつ傾向や認知機能の低下などが起こります。

加えて、外出頻度が少なくなることで身体機能が低下する恐れがあります。

また、食べにくさや口の痛みなどがあることで必要な量の食事が摂れなくなったり、食欲が低下したりして栄養状態が悪化することがあります。

このようにオーラルフレイルはさまざまな機能に影響を与え、フレイルを悪化させる一因になるのですね。

オーラルフレイルを改善するためには、歯磨きなどでセルフケアをするようにしましょう。

また口内の痛みやむし歯がある場合などには、放置せず歯科で適切に治療することが重要です。

それによりコミュニケーションが取りやすくなる、食べにくさや飲み込みにくさが改善できる、十分な食事が摂れるなどといった効果が期待できます。

フレイルを予防するためには、口腔内の健康を保つようにしましょう。

ポイント8 社会参加の機会を増やす

フレイル予防には、コミュニケーションや社会参加の機会を増やしたり、認知トレーニングを行ったりすることが重要だと考えられています。

加齢に伴う外出の減少や、独居での生活などで社会とのつながりが少なくなると、認知機能の低下やうつなどを招き精神・心理的フレイルのリスクが高まります。

フレイルを予防するためには、人と交流する機会をつくる、誰かと一緒にご飯を食べるといった取り組みが効果的です。

体を動かすことが好きであれば、地域のグラウンドゴルフやラジオ体操に参加する、室内での趣味を楽しみたい場合は、地域で開かれている俳句や編み物、楽器などの教室に参加するといったことも社会参加のきっかけになりますよ。

まずは自分の好きなことや興味のあること、得意なことから始めるようにしてくださいね。

また、認知機能を改善する認知トレーニングとしては「コグニサイズ」が有効だとされています。

コグニサイズでは、運動しながら認知機能の低下を予防することができます。

具体的には速歩をしながらしりとりをする、数を繰り返し数えながら足踏みを行い、慣れてきたら手拍子を加えるといった方法があります。

コグニサイズを詳しく知りたいという方は神奈川県の「コグニサイズ実践のヒントBook」をご確認ください。

コグニサイズ実践のヒントBook

6.フレイルが疑われる場合は適切な機関に相談しよう

看護師と患者

「最近、高齢の両親の体が衰えてきている気がする。」

「今の自分の状態はフレイルなのかもしれない。」

このように心配している方もいらっしゃるかもしれませんね。

そのようなときには「地域包括支援センター」などで相談してみましょう

地域包括支援センターとは
市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などのアプローチにより、住民の健康の保持および生活の安定のために必要な援助を行う施設です。自治体によって名称が異なり、すこやかあんしんセンター、シニアサポートセンターなどと呼ばれる場合もあります。

高齢者本人だけでなく、家族や親族など高齢者に関わっている方であれば誰でも利用できます。

フレイルに関する具体的なアドバイスや、フレイル予防のための自治体の取り組みへの紹介を受けることができます

また生活全般への心配事にも対応し、相談先が分からない場合の窓口となる役割もあるため気軽に利用すると良いでしょう。

フレイルの特徴である疲れやすさ、活動量の低下、筋力の低下、動作の遅さ、体重の減少などが見られたり、気になる症状があったりする場合には医療機関を受診しましょう

「老年内科」や「老年病科」「フレイル外来」などを受診するか、かかりつけ医に相談してみてくださいね。

7.フレイルについてのまとめ

フレイルとは加齢により心身の機能および社会性が老い衰え、健常と要介護状態の間にある状態のことです。

フレイルより手前の軽い状態を「プレフレイル」といいます。

多くの方は、高齢になるにつれて心身や社会性に受けたダメージからの回復が難しくなり、さまざまな病気の進行なども重なることで、介護が必要な状態へ移行します。

フレイルは、大きく「身体的フレイル」「社会的フレイル」「精神・心理的フレイル」に分類されます

身体的フレイルは、加齢に伴う筋力の低下や運動機能の障害などによって、日常生活を送るために必要な身体能力が衰える状態です。

また社会的フレイルは社会とのつながりが希薄になること、精神・心理的フレイルは、認知機能低下やうつ状態などが現れることをいいます。

その他、加齢によって口腔機能が低下する「オーラルフレイル」があります。

フレイルを放置していると要介護に進行する恐れがあるため、早期発見と予防に努めることが重要です。

フレイルの診断には体重減少、疲労感の自覚、活動量の減少、歩行速度の低下などが評価基準として用いられます。

早期発見のため、自身でフレイルをチェックする方法としては簡易チェックがあり、自治体などで詳しく確認できるものに総合チェックがあります。

フレイルを予防するためには「栄養(食・口腔機能)」「運動」「社会参加」がポイントです。

具体的には栄養を十分に摂ること、運動を適切に行うこと、生活習慣病を治療すること、口内環境を整えること、他者と関わることなどがあります。

フレイルが疑われる場合は、地域包括支援センターやかかりつけ医などに相談するようにしてくださいね。