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高血圧を防ぐ4つのポイントと注意事項|腎機能と運動強度を詳しく解説

生活習慣を整えるだけでも、60代の血圧は確かな変化を見せます。本記事では、食生活の改善(減塩・栄養)、適度な運動、節酒・禁煙、十分な休養と睡眠という4本柱を原文どおりに掲載。実践のハードルを下げる減塩テク、有酸素運動の時間目安、アルコール量の具体換算、ストレスと交感神経の関係まで、行動に移しやすい内容が中心です。この文章を読むと、日常で血圧を正常に近づける方法を詳しく知ることができます。

血圧を正常に保つためのポイント

「血圧を正常に保つにはどうしたら良いものか……」 「高めになった血圧は正常値に戻せるのだろうか?」 血圧が高くなり過ぎたり低くなり過ぎたりすると健康に影響が出るため、正常に保つにはどうすれば良いか気になりますよね。

多くの場合は高血圧も低血圧も、日頃の生活習慣を見直すことで正常値に近づけることができます。 この記事では、自分でできる日常生活上の血圧改善ポイントを紹介します。

小さな変化でも継続すれば大きな改善が期待できるため、ぜひ挑戦してくださいね。

血圧を正常に保つためのポイント

ポイント1 食生活の改善

野菜メインの和食

血圧を正常に保つためには食生活を見直しましょう血圧の高い方は、まず塩分の摂取量を減らす必要があります

日本人は日常生活のなかで塩分の多いしょうゆ、みそなどの調味料や、インスタントラーメンのような加工食品を頻繁に口にしています。 そのため、多くの日本人が塩分を過剰摂取しています。

厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査報告」によると、日本人の1日の塩分摂取の平均量は成人男性で10.9g、成人女性で9.3gです[1]。 しかし60代の平均量を見ると男性で11.5g、女性で10.0gと成人全体の平均を上回っています[1]。

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」では高血圧の方の減塩目標値を1日当たり6g未満としており[2]、平均量から計算すると60代の男性は5.5g、女性は4gもの減塩が必要となります。

なお現時点で高血圧でない方は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」による成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満の塩分摂取目標量を参考に減塩を目指してみましょう[3]。

具体的な減塩方法としては、まず全体的に薄味の調理を心掛けることが重要です。 またしょうゆやソースなどの調味料はそのままかけると量が多くなりがちなため、小皿に出してつけるようにしましょう。 他にも以下のような工夫をすることで、無理なく日常生活のなかで減塩を始められます。

簡単にできる減塩の方法

厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」をもとに執筆者作成

特にラーメンなどの麺類の汁は全部飲むと6g近い塩分を摂取してしまうため、どんなにおいしくても残す習慣を付けてください。 減塩には、塩分の摂取量を減らす以外にも効果的な方法があります。

カリウムというミネラルには腎臓からの塩分排出を促すはたらきがあります

ミネラルとは
地球上に存在する元素のうち、生体の主要な構成成分である酸素、炭素、水素、窒素以外の総称です。このうち人体に欠かせない16種が「必須ミネラル」と呼ばれます[4]。ミネラルは体内ではつくれないため、食事などで摂取する必要があります。

カリウムを多く含む食品には、バナナやキウイフルーツなどの果物、さつまいもやながいもなどのいも類、ほうれん草などの野菜、わかめやこんぶなどの海藻類があります。

また納豆や肉類、魚介類などにもカリウムは含まれています。

注意!
腎臓の機能が低下するとカリウムがうまく排出されず、血液中の濃度が高まり「高カリウム血症」を引き起こす危険があります。腎臓病で治療を受けている方はカリウムの摂取量について主治医に確認してください。

また食物繊維には塩分を吸着して体外に排出するはたらきがあります

食物繊維とは
食べ物のなかで、人間の消化酵素で分解できない成分全体を指しています。

食物繊維を多く摂ることで、摂取した塩分が体内に吸収されにくくなるのですね。 食物繊維は塩分だけでなく脂肪や糖類の排出も促すため、肥満や糖尿病などの予防・改善にも効果が期待できます。 肥満や糖尿病は動脈硬化をもたらすリスクがあるため、しっかり食物繊維を摂ることは高血圧改善にとどまらない効果があるといえるでしょう。

動脈硬化とは
血管が本来の弾力性を失い、厚く硬くなった状態です。加齢だけでなく高血圧や高血糖などによっても起こり、脳卒中や心筋梗塞など致命的な生活習慣病の原因となります。

食物繊維は野菜や果物に加え、豆類、いも類やきのこ、海藻類、穀類などの植物性食品に多く含まれています。 また肥満も高血圧の大きな原因の一つで、肥満者が高血圧になる可能性は正常体重者の2~3倍といわれています[5]。 そのため肥満を解消することは高血圧の改善に効果的といえます。

肥満を解消するには、減量によって体脂肪を減らす必要があります。 具体的な減量の方法は食事から摂取するエネルギーを減らすことと、運動によって消費するエネルギーを増やすことです。 摂取エネルギーを減らすダイエットは重要ですが、極端な食事制限は長続きせずリバウンドの原因ともなります。

また必要な栄養素が不足すると骨粗しょう症や貧血、便秘などを引き起こし健康を損なう危険もあるため、栄養バランスに気を付けながら無理なく行いましょう。

肥満は高血圧の原因となるだけでなく、高血糖や糖尿病など多くの生活習慣病をもたらします肥満の解消は高血圧をはじめとする多くの生活習慣病のリスクを減らすための効果的な方法だといえるでしょう。

低血圧の解消にも食生活の改善は有効です。 低血圧の方は偏食を避け、たんぱく質やミネラル、ビタミンの豊富な食品をバランス良く摂ることを心掛けましょう。 また水分をしっかり摂取し、塩分も控え過ぎないようにしましょう

高齢者では、食後に消化のために血液が胃に集中することによる「食後低血圧」が発生する場合があります。 食後に低血圧の症状が出る場合は、食事の後にお茶やコーヒーなどでカフェインを摂取するのも効果的です。

[1] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査

[2] 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019

[3] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)

[4] 国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識

[5] 日本肥満症予防協会「3. 肥満と高血圧

ポイント2 適度な運動

ハイキングする高齢男性

運動も血圧を正常に保つために有効です高血圧の改善のためには、日々適度に運動することが推奨されています

運動をすると、血管の内側の内皮細胞に刺激が加わり活性化します。 活性化した内皮細胞は血管を柔らかくしなやかにする一酸化窒素を放出するため、動脈硬化が改善されて血圧が下がるのです

また運動によってインスリンの効果が高まり分泌量が抑制されるため、血管の収縮を防ぎ、結果として血圧の上昇を防ぎます。

インスリンとは
膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンで、糖の代謝を調節し血糖値を一定に保つはたらきがあります。インスリンが過剰に分泌されると血管が収縮し、血圧が上がります。

さらに運動は消費エネルギーを増やすため、高血圧の原因の一つである肥満の解消にも有効です。 食生活の改善と共に、適度な運動は血圧を正常に保つために非常に効果的だといえるでしょう。 高血圧改善を目指す運動としては、ウォーキングやステップ運動、ジョギングなどの有酸素運動が推奨されています

できるだけ毎日30分以上、もしくは1週間で計180分以上を目安に運動を継続させましょう[6]。 なお運動をする際はややきついと感じる程度にとどめ、無理をしないことが重要です。

注意!
既に高血圧を発症している方は運動中に血圧が上がり過ぎる危険があるため、きつい運動は推奨されません。運動をする際は必ず医師の判断を仰いでください。

また有酸素運動に加えて筋力トレーニングやストレッチも推奨されているため、こちらも無理のない範囲で生活に取り入れてみましょう。 運動時間が取りにくい方は階段を使う、通勤時に一駅分歩く、積極的に掃除や片付けを行うなどして意識的に体を動かすようにしてみてくださいね。

低血圧の方は手足などの末端部分の血管の収縮力が悪く、血液の循環が滞りやすい傾向があります。 そのため血液の循環に深く関係するふくらはぎなどの下半身の筋肉を鍛えることで、改善が期待できる場合があります。 自分のペースに合わせ、無理なくウォーキングなどの有酸素運動を行ってみましょう。

ただし目まいや立ちくらみなどの症状が出ている場合は転倒などの危険があるため、医師に相談してから運動を始めるようにしてください

[6] 日本高血圧学会「高血圧の話」

ポイント3 節酒・禁煙

ビールで乾杯するひとたち

血圧を正常に保ちたい方は節酒・禁煙をしましょう飲酒の習慣は高血圧の原因となるため、高めの血圧が気になっている方はお酒の量を控えましょう。

日本高血圧学会は、高血圧の予防・改善のためには1日の飲酒量として、純アルコール量で男性は20~30mL以下、女性はその半分の10~20mL以下とすることを推奨しています[7]。 純アルコールの量で20~30mLはビールでは中瓶1本、日本酒では1合、焼酎では半合、ワインでは2杯、ウイスキーではダブルで1杯程度に相当します[7]。

加えて週に1日程度は休肝日を設けましょう[8]。 医師から特に指示されていない限りは、高血圧を理由に禁酒する必要はありません。 なお、おつまみには塩味の濃いものが多いため、できるだけ薄味のものを選ぶようにしてくださいね。

一方、たばこの煙にはニコチンや活性酸素など血圧に関係する有害物質が含まれおり、高血圧の重大なリスクとなります。 ニコチンは交感神経にはたらきかけて血管を収縮させるため、血圧を上昇させて心臓や血管に負担をかけます。

また活性酸素は血管内皮に炎症を起こさせて組織障害を起こすと同時に、インスリンを効きにくくさせて過剰分泌をもたらします。 インスリンが過剰に分泌されると交感神経が活発になり、血管が収縮するため血圧が上がります。

さらに喫煙は高血圧だけでなく動脈硬化の原因にもなるため、心不全や脳卒中のリスクも高めてしまいます。 たばこはがんや呼吸器疾患、糖尿病などのリスクも増大させるため、喫煙は文字どおり百害あって一利なしといえます。 しかも喫煙によるリスクは自分だけにとどまらず、受動喫煙によって同居する家族らにもリスクを負わせてしまうことを忘れてはならないでしょう。

高血圧に限らず、自分と周りの人の健康を考えるならば早急に禁煙しましょう。

[7] 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」

[8] 厚生労働省 e-ヘルスネット「栄養・食生活と高血圧」

ポイント4 十分な休養と睡眠

開いた本と眼鏡

血圧を正常に保つため、十分に休養と睡眠をとるようにしましょう。 日々のストレスは高血圧の原因となります。

人間の体はストレスを受けると緊張し、防御反応として交感神経が活発になります。

メモ
ストレスを受けると脳から副腎皮質刺激ホルモンが分泌され、その刺激でアドレナリンなどのホルモンが分泌されて交感神経が活性化します。一方で緊張を和らげるために副腎皮質刺激ホルモンを分解する酵素が放出されますが、その分解過程で高血圧をもたらす活性酸素も生成されてしまいます。

交感神経が活発になると血管が収縮するため、血圧が上がってしまうのです。 そのため、ストレスをため込まずに解消することが血圧を正常に保つために重要なのですね。

自宅で簡単にできるストレス解消の方法としては、入浴が効果的です。 シャワーだけで済まさずに少しぬるめのお湯にじっくりつかり、読書や音楽鑑賞などお好みの方法でリラックスしてみてください。

また適度な運動は血圧を下げるだけでなく、ストレス解消の効果もあります。 食後のウォーキングやちょっとした散歩といった有酸素運動を習慣にしてみましょう。

ストレスというと仕事や人間関係などによる精神的なストレスを思い浮かべがちですが、過労や睡眠不足、暑さや寒さなどの気候などによる身体的ストレスもあります。 過労や睡眠不足の方は規則正しい生活を心掛け、十分な休養と睡眠をとるようにしましょう。 ストレスで寝付けない場合は無理に眠ろうとせず、好きな本を読んだり好きな音楽を聴いたりして脳をリラックスさせることが大切です。

身体的ストレスのなかでも特に危険なのが、寒い時期の急激な温度変化によるストレスです。 暖かい室内などから急に寒い場所に移動すると血管が収縮して血圧が上がります。 激しい温度変化を避けるため外出時は帽子やマフラー、手袋などで肌の露出を抑えるようにしましょう。

また冬の起床時や入浴時も血圧が急変しやすいため注意が必要です。 起床時間に合わせて寝室の暖房をタイマー設定する、入浴時には脱衣所や浴室に暖房を入れ、熱過ぎるお湯につからないなどの対策を取りましょう。

一方、就業中の方の場合精神的ストレスで気を付けたいのは仕事上のストレスによる「職場高血圧」です。 職場高血圧はストレスに起因する高血圧のなかでも代表的なものです。

職場ではパワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどの人間関係による精神的なストレスだけでなく、長時間労働や激務による身体的なストレスが加わることもあります。 就業中の方は職場でのストレスを一人で抱え込まず、早い段階で職場の上司や同僚、場合によっては労働基準監督署や労働局、弁護士などに相談してみても良いでしょう。

また高齢になると退職による社会的役割の変化や収入の減少、身近な家族や友人との死別などの生活の変化がストレスになるケースが増えます。 こうした状況の変化に対しても自分だけで悩まず、誰かに話を聞いてもらったり、医師やソーシャルワーカーに相談したりすると気持ちが楽になるかもしれません。

低血圧の方にも、休養と睡眠は重要です。 過労を避け、夜更かしせずに十分な睡眠をとり、規則正しい生活を心掛けてください。 また低血圧の方は入浴の際、少し熱めのお湯に肩までつかって温まるようにしましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。減塩・栄養、有酸素運動(週180分目安)、節酒/禁煙、休養/睡眠とストレス対策という4本柱は、60代の血圧管理の“土台”です。

チェックポイント 塩分は目標値を設定(腎機能に注意) 運動は無理なく継続、既往高血圧は医師判断 アルコール量の上限と休肝日 寒暖差や睡眠不足への対策