家庭でできる血圧ケア5選|食事・お酒・運動・禁煙・メンタル管理
数値を下げる特効薬は“続けやすい生活”です。食塩6g未満の減塩、純アルコール20g程度の適正飲酒、ややきつい有酸素運動、禁煙、ストレス対処——どれも科学的根拠のある打ち手です。この文章では高血圧の予防・改善に役立つ生活習慣のポイントを解説しています。
高血圧を予防・改善するための生活習慣のポイント
高血圧の予防・改善のためには、生活習慣を見直し、改善することが重要です。
「生活習慣ではどのようなことに気を付けたら良いんだろう?」と気になりますよね。
そこで、この章では高血圧を予防・改善するための生活習慣のポイントを解説します。 これからお伝えするポイントを参考に、ご自身の生活を見直しましょう。
ポイント1 食事内容を見直す
高血圧を予防・改善するためには、食事内容を見直すことが重要です。
WHOは成人の1日のナトリウム摂取量を食塩相当量で5g未満に抑えることを強く推奨しています[1]。 また国内でも高血圧の予防や治療のためには食塩摂取量を1日当たり6g未満にすることが推奨されています[1]。
しかし日本人の食塩摂取量は多い傾向にあり、厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」によれば、20歳以上の1日当たりのナトリウム平均摂取量は食塩相当量で男性の場合10.9g、女性の場合9.3gと目標量を大きく上回っています[2]。
まずは塩分を摂り過ぎていないかチェックしてみましょう。
【塩分の摂り過ぎになりやすい食習慣】
- 漬物を多く食べる
- ハムや練り物などの加工食品を多く食べる
- 汁物を1日に2杯以上飲んでいる
- ラーメンなどの麺類の汁を全部飲むことが多い
- ソースやしょうゆをよくかける
上記に当てはまる方は、塩分を摂り過ぎていると考えられます。
以下のようなポイントを押さえて減塩を行いましょう。
また、野菜や果物などを積極的に摂ることもポイントです。 野菜や果物にはナトリウムの排せつを促し血圧を下げる作用のある「カリウム」というミネラルが多く含まれています。
そのため、野菜料理を毎食1品以上取り入れ、カリウムを十分に摂るように心掛けましょう。
また、食べ過ぎに注意して体重をコントロールすることも重要です。
摂取カロリーが消費カロリーを上回った状態が続くと肥満になります。
まずはご自身が肥満かどうかをチェックしましょう。
肥満かどうかを判断するには「BMI」が適しています。
肥満に該当する場合は、摂取カロリーを抑え減量することが必要です。
ただし極端に食事量を制限すると集中力が低下したり疲れやすくなったりすることもあるため、自分に必要な摂取カロリーを把握した上で調節するようにしましょう。
厚生労働省では1日に必要なカロリー(推定エネルギー必要量)を以下のように定めています。
| 性別 | 男性 | 女性 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 身体活動レベル | 低い | 普通 | 高い | 低い | 普通 | 高い |
| 18〜29歳 | ||||||
| 30〜49歳 | ||||||
| 50〜64歳 | ||||||
| 65〜74歳 | ||||||
| 75歳以上 | ||||||
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
なお、身体活動レベルとは1日にどのくらい活動しているかを表す指標となるもので、活動量によって以下の3段階に分けられます。
| 身体活動レベル | 日常生活の内容 |
|---|---|
| 低い | 生活の大部分を座って過ごしている場合 |
| 普通 | 座って過ごすことが多いが、立った状態での作業や通勤、買い物での歩行、家事、軽いスポーツなどをしている場合 |
| 高い | 歩いたり立ったりしている時間が長い場合、あるいは活発な運動習慣がある場合 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
自分の性別と年齢、活動量に合ったカロリーを目安にして、できるだけその目安を超えないように食事量を調節することがポイントです。
また間食やお酒のおつまみを摂る習慣のある方はその分のカロリーも考慮に入れつつ、1日の摂取カロリーを全体で調節するようにしましょう。
ポイント2 飲酒を控える
アルコールを控えることは高血圧の予防・改善において重要です。
実際に飲酒習慣のある高血圧患者が飲酒量を減らすと、血圧が低下することがさまざまな研究で分かっています[4]。 そのため、飲酒習慣のある方は飲酒量を減らすことを意識しましょう。
また適切な飲酒量を把握しておくこともポイントです。 厚生労働省では適度な飲酒量として1日平均純アルコール20g程度と定めています[5]。
純アルコール20g程度とはビールでは中瓶1本、日本酒では1合に相当します[6]。
公益社団法人 アルコール健康医学協会「お酒と健康 飲酒の基礎知識」をもとに執筆者作成
また最低でも週1日以上の休肝日を設けて肝臓を休ませることも必要です[7]。 適切なお酒の量と頻度を意識して飲み過ぎないようにしましょう。
2023年に発表された研究結果では、ノンアルコール飲料は飲酒量の減少に有⽤であり、減酒のきっかけにもなる可能性が明らかになりました[8]。
ストレスなく飲酒量を控えるために、ノンアルコール飲料を活用してみても良いですね。
[5] 厚生労働省「アルコール」
[8] H. Yoshimoto et al. 「Effect of provision of non-alcoholic beverages on alcohol consumption: a randomized controlled study」(BMC Medicine, volume 21, Article number: 379 (2023) )
ポイント3 運動習慣を身に付ける
運動習慣を身に付けることもポイントです。 運動は血管を広げて血行を良くし血圧を下げるといわれています。
また肥満の解消やストレス発散にも役立つため高血圧の予防・改善に欠かせません。 「でも、どんな運動をどのくらい行えば良いんだろう……」
このように具体的な運動方法を知りたいものですよね。 高血圧改善のための運動は有酸素運動を中心として「ややきつい」と感じられる程度の強度で行うのが望ましいとされています。
有酸素運動は1日30分以上をできるだけ毎日、定期的に行いましょう[9]。 しかし、まとまった運動時間が取れない場合もあるかもしれません。
その場合は、1回当たり10分以上の有酸素運動を数回に分けて行い、1日の合計が40分以上となるように行っても良いとされます[9]。 ただし運動習慣のない方は、急に運動すると体に負担がかかる可能性があります。
まずは掃除や買い物に行くなどといった日常生活の活動量を増やすことから始めても良いでしょう。
ポイント4 禁煙をする
喫煙している方は早めに禁煙するようにしましょう。
喫煙の期間が長く、本数が多いほど高血圧による病気のリスクが高まることが分かっていますが、禁煙を始めるのが早ければ早いほど、そのリスクを低下させられるといわれています。
「禁煙すべきと分かっていても、続けられるか不安……」
と悩んでしまいますよね。
禁煙を始める前に、自分が禁煙したい理由を書き出したり、禁煙する旨を書いた紙を見やすい位置に貼ったりしておくことがおすすめです。 禁煙がつらくなったときに初心に戻って禁煙について考え直すことができ、モチベーションの維持に役立ちます。
また吸いたくなったときの対処法を決めておくこともおすすめです。 禁煙を始めると「離脱症状」が現れ、吸いたい気持ちが強くなってしまう場合があります。
またたばこはさまざまシーンで吸いたくなると考えられるため、場面ごとに対処法を決めておくと良いでしょう。
以下にたばこが吸いたくなったときの対処法をご紹介するので、参考にしてくださいね。
しかし、たばこには依存性のある物質も含まれるため、ご自身の意志だけを頼りに禁煙を行うのは難しい部分もあるでしょう。 最近は医師の禁煙指導が受けられる「禁煙外来」や専門家による「禁煙支援」などもあります。
禁煙外来は禁煙したい人のために設けられた専門外来で、依存度の診断や専門家による禁煙へのアドバイスに加え、飲み薬や貼り薬を使用した治療を行います。 一定の基準を満たすと保険が適用されるので、詳しい条件は厚生労働省のe-ヘルスネット「禁煙治療ってどんなもの?」を確認してください。
専門家によるサポートや治療薬の使用により禁煙の成功率が高められます。 無理せずに周りの協力を得ながら禁煙を進めていくと良いでしょう。
ポイント5 ストレスをためない
血圧を正常の範囲内に保つためにはストレスと上手に付き合うこともポイントです。 日常生活を過ごしているなかで、気付かないうちにストレスをためてしまっていることも考えられます。
ストレスをためないためには、規則正しい生活を意識するようにしましょう。
十分な睡眠や栄養バランスの良い食事、適度な運動などの習慣を維持することが重要です。
また寝る時間や起きる時間を決めて生活リズムを整えると良いでしょう。
しかし日常生活で気を付けていても、ストレスはたまってしまうと考えられます。そのためストレスを解消することも重要です。 ゆっくりお風呂に入ったり好きな音楽を聴いたり、自分の好きなことに取り組んだりしてストレスを解消すると良いでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。 生活改善は積み重ねが効く投資です。
減塩(かけない・飲み干さない・加工品注意)、飲酒(純アルコール20g/日、休肝日)、運動(ややきつい有酸素を合計40分/日に)、禁煙(外来や支援で成功率向上)、ストレス(睡眠・栄養・適度な活動)。
家庭血圧の記録と併せ、3か月単位で見直しましょう。