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血圧の正常値は全年代共通!診察室血圧と家庭血圧の基準をわかりやすく

血圧は「上(収縮期)」「下(拡張期)」の二つの数値で評価されますが、正常値の考え方や診察室血圧・家庭血圧の違い、基準から外れた場合のリスクを正しく理解できている人は多くありません。

本記事では、全年代で共通の正常値と、高血圧・低血圧が招く健康リスクをまとめて確認します。この文章では血圧の基礎、正常値、外れたときの影響を解説しています。

血圧の基礎知識

健康診断の結果票

「そもそも血圧ってどういうものなんだろう?」

血圧という言葉を見聞きする機会はよくありますが、実際には血圧がどういうものなのか、正常値を外れているとどのような問題があるのか詳しく知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

血圧とは心臓から出た血液が動脈という血管の内側にかける圧力のことです。

動脈とは
心臓から送り出される血液を全身に運搬する血管です。酸素や栄養を運ぶ重要な役割があります。

血圧には2種類の数値があります。

血圧を測定した際に、二つの数値が記録されているのを見たことがあるという方もいらっしゃるでしょう。 血圧は心臓が収縮し血液を送り出したときに最も高くなり、このときの血圧を「収縮期血圧(最高血圧)」といいます。

これがいわゆる「上の血圧」です。

一方、心臓が広がったときには血圧は最も低くなり、このときの血圧を「拡張期血圧(最低血圧)」といいます。「下の血圧」という呼び方にはなじみがあるかもしれませんね。

血圧を測定する際には、収縮期血圧と拡張期血圧の両方の数値をもって正常かどうかを判断することになります。

この記事では血圧の正常値はどれくらいなのか、正常値から外れるとどうなるのかについて解説します。

血圧の正常値

「50代の場合、血圧がどれくらいなら健康といえるんだろう?」

血圧の正常値はどれくらいなのか気になりますよね。実は血圧の正常値はどの年代でも同じです。

病院で測定した場合の血圧の正常値は、収縮期血圧が120mmHg未満かつ拡張期血圧が80mmHg未満です[1]。

メモ
血圧の単位である「mmHg」は、「ミリメートル・エイチジー」と読みます。

血圧にはいくつかの基準値が設けられているので、病院で測定した場合の血圧(診察室血圧)の基準値をまとめてご紹介しましょう。

【病院での測定した場合の血圧の基準値】

分類 収縮期血圧 拡張期血圧
正常血圧 120mmHg未満 かつ 80mmHg未満
正常高値血圧 120~129mmHg かつ 80mmHg未満
高値血圧 130~139mmHg かつ/または 80~89mmHg
I度高血圧 140~159mmHg かつ/または 90~99mmHg
II度高血圧 160~179mmHg かつ/または 100~109mmHg
Ⅲ度高血圧 180mmHg以上 かつ/または 110mmHg以上

厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」をもとに執筆者作成

かつては血圧診察室血圧の収縮期血圧が140mmHg未満かつ拡張期血圧が90mmHgであれば正常な血圧と考えられていましたが、近年では「正常高値血圧」や「高値血圧」の場合も注意が必要とされています[2]。

正常血圧の数値を超えると病気の発症率が高まることが、国内外の研究から分かっているのです。

ただし血圧は緊張していると一時的に上昇する傾向にあるため、病院での測定値は緊張から普段よりも少し高くなっている可能性があります。

そのため、家庭で測定した血圧も重要です。家庭で測定する場合、基準値は診察室血圧より低く設定されています。

家庭で血圧を測定する場合の正常値は、収縮期血圧115mmHg未満かつ拡張期血圧75mmHg未満です[1]。

【家庭で測定した場合の血圧の基準値】

分類 収縮期血圧 拡張期血圧
正常血圧 115mmHg未満 かつ 75mmHg未満
正常高値血圧 115~124mmHg かつ 75mmHg未満
高値血圧 125~134mmHg かつ/または 75~84mmHg
I度高血圧 135~144mmHg かつ/または 85~89mmHg
II度高血圧 145~159mmHg かつ/または 90~99mmHg
Ⅲ度高血圧 160mmHg以上 かつ/または 100mmHg以上

厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」をもとに執筆者作成

なお、血圧は常に一定ではなくストレスや温度などによって変動するため、高血圧は繰り返し測定しても血圧が正常値より高い場合にのみ診断されます

慢性的に血圧が正常値よりも高い高血圧の状態は、深刻な病気のリスクを高めます。普段から血圧を測る習慣を付け、慢性的に正常値から外れている場合は医師に相談すると良いでしょう

[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」

[2] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」

血圧が正常値を外れている場合のリスク

「血圧が正常値から外れるとどうなるのかな?」このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

まずは高血圧が健康に及ぼすリスクについてご説明しましょう。血圧が高い状態が続くと血管に負担がかかり動脈硬化につながります

動脈硬化とは動脈という血管が厚く硬くなった状態で、進行すると脳出血や脳梗塞、大動脈瘤(りゅう)、心筋梗塞などのさまざまな重篤な病気の原因となります。

メモ
脳出血は脳の中の細い動脈が破れ、脳の中で出血する病気です。脳梗塞は脳の動脈がふさがれ、血液が行き届かなくなることで脳が壊死してしまう病気です。心筋梗塞では心臓を取り巻く冠動脈がふさがることで心臓に血液を送ることができず、壊死が起こります。大動脈瘤は人体で最も太い「大動脈」がこぶ状に膨らんだ状態のことです。破裂すると大量出血が起こり、命を脅かします。

日本人の高血圧の患者数は数十年前に比べると減少していますが、令和元年の時点でも20歳以上の約半数は高血圧です[3]。

高血圧にはほとんど自覚症状がなく、気付かないまま放置していると命に関わる危険を招いてしまうので注意が必要です。

また、血圧が正常値よりも低い状態を「低血圧」といいます。

低血圧は一般的に収縮期血圧が100mmHg未満の状態のことです[4]。

メモ
低血圧には、高血圧のような厳密な診断基準はなく、専門家によっても判断が異なる場合があります。

低血圧になると各臓器へ送られる血液量が減少するため、立ちくらみや目まい、頭痛などといった症状が起こり、日常生活に支障を来すこともあります

低血圧は高血圧に比べ心臓病などの命に関わる病気を引き起こすことはありませんが、さまざまな症状が現れるためつらい場合には医療機関を受診して適切な治療を受けましょう

[3] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」

[4] 公営社団法人 日本医師会 健康の森「低血圧 見逃されやすい低血圧」

まとめ

いかがでしたでしょうか。

血圧の正常値は年代に関係なく、診察室血圧では120/80mmHg未満、家庭血圧では115/75mmHg未満が目安です。

ここを上回る「正常高値」「高値」領域でも将来リスクは漸増します。 測定環境で基準が異なる点、高血圧は自覚症状に乏しい点、低血圧も生活の質に影響する点を押さえましょう。