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HDLコレステロールが高くなる原因4選|病気・飲酒・薬の影響を解説

HDLコレステロールは、動脈硬化を防ぐ「善玉コレステロール」として知られています。 しかし、その値が極端に高い場合には、体内で何らかの異常が起きていることもあります。

実は、HDLコレステロールの上昇には 遺伝的な病気・肝臓疾患・過度な飲酒・薬の影響 など、いくつかの要因が関係していることがわかっています。

この記事では、HDLコレステロールが高くなる代表的な4つの原因を医学的根拠に基づいてわかりやすく紹介します。 「なぜ高くなるのか?」を理解することは、今後の健康管理や生活習慣の見直しにもつながります。

HDLコレステロール値が高くなる原因

「それじゃあ、HDLコレステロールが高くなってしまう原因って何だろう?」 と気になった方も多いでしょう。

そこで、記事ではHDLコレステロールが高くなる主な四つの原因について説明します。

コレステリルエステル転送たんぱく(CETP)欠損症

HDLコレステロール値が高くなる原因の一つとして「コレステリルエステル転送たんぱく(CETP)欠損症」が挙げられます。 CETP欠損症とは、日本で発見された脂質異常症の一種で、遺伝的に「CETP(コリステリルエステル転送たんぱく)」が少ない病気です。

CETPとは
肝臓や小腸で合成され血中に存在するたんぱく質の一種です。 HDLコレステロールやLDLコレステロールの質と量を調節するはたらきがあります。

CETPが欠損していると、HDLコレステロールの増加やLDLコレステロールの変質を引き起こします。 HDLコレステロールには動脈硬化を予防する効果が期待できますが、CETP欠損症の場合は動脈硬化性疾患の保有率が高いとされているため注意が必要です。

動脈硬化とは
心臓から血液を全身の器官に送る血管「動脈」の壁が本来のしなやかさや弾力性を失い、厚く硬くなってしまった状態のことです。 狭心症や心筋梗塞、脳梗塞など心臓や脳の血管の病気を引き起こす原因となります。

原発性胆汁性胆管炎

HDLコレステロール値が高くなる原因として「原発性胆汁性胆管炎」が考えられます。 原発性胆汁性胆管炎とは、肝臓の中にある細い「胆管」が炎症を起こす病気です。

肝臓では「胆汁」と呼ばれる消化液がつくられており、胆汁は胆管を流れています。 胆汁は食べ物を消化するだけでなく、過剰なコレステロールや「ビリルビン」などの老廃物を体の外に排出するはたらきもあり、胆管を通って肝臓から胆のうに蓄えられ、小腸に運ばれます。

ビリルビンとは
赤血球が分解されたときに発生する色素です。 赤血球は全身に酸素を運ぶ役割がありますが、古くなると破壊されてビリルビンが出されます。 ビリルビンは肝臓に運ばれ、のちに胆汁に排出されます。
胆のうとは
胆汁を蓄える機能を持つ臓器です。 「胆道」という管で肝臓とつながっています。

しかし胆管が炎症を起こすと胆汁が肝臓の外に運ばれなくなり、胆汁が肝細胞にとどまって炎症を引き起こしてしまいます。 胆汁が運ばれなくなると、血中コレステロールが上昇し、目の周りに脂肪が沈着する眼瞼(がんけん)黄色腫となることがあります。 原発性胆汁性胆管炎を放置するとさらに症状は悪化し、「肝硬変」や「肝不全」などの大きな病気につながるリスクもあります

メモ
肝硬変とは肝臓の再生能力や機能が損なわれる病気のことです。 病気、薬、または毒素などによって肝臓が繰り返しダメージを受けると、肝臓の組織は機能を果たさない組織に置き換わってしまいます。 また、肝不全とは肝臓の機能が大きく低下した状態です。 ウイルス性肝炎、肝硬変などの病気やアルコール、薬などの影響により肝臓が傷つけられて起こることがあります。

原発性胆汁性胆管炎は完治する治療法はないため、発症した際には症状を緩和したり進行を遅らせたりする治療が行われます。

長期間にわたる大量飲酒

ビールで乾杯している様子

HDLコレステロール値は過度なアルコール摂取によっても高くなります。 習慣的な大量の飲酒はCETPのはたらきを低下させ、HDLコレステロール値の上昇を招きます。

少量の飲酒ならHDLコレステロールが増えることで動脈硬化の予防になる場合もありますが、長期間にわたって過度なアルコール摂取を続けるのは危険です。 過度な飲酒は肥満や高血圧などにつながり、大きな病気を引き起こす恐れもあります。 また、トリグリセリド値を上昇させ動脈硬化のリスクを高めます。

このように長期にわたる大量の飲酒は、HDLコレステロール値を高めたり健康に悪影響を及ぼしたりするのですね。

薬の副作用

薬

薬の副作用によってもHDLコレステロール値が高くなる場合があります

トリグリセリド値を下げるフィブラート系薬、コレステロール値とトリグリセリド値を下げるニコチン酸、コレステロール値を下げるスタチン系薬などの脂質異常症の薬剤はHDLコレステロール値を上昇させます。 その他にも、女性の更年期症状の緩和に使用するエストロゲン製剤、血糖値の上昇を抑えるインスリン、炎症を抑えるステロイドホルモンなどの薬剤にもHDLコレステロール値を上昇させる作用があるとされます。

メモ
更年期は閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた10年間のことを指します[1]。 この時期に現れる火照りやのぼせなどの症状を「更年期症状」といいます。 なお、閉経とは月経が永久に停止した状態です。

脂質異常症の薬だけではなく、さまざまな薬の副作用によってHDLコレステロール値は高くなってしまうことがあるのですね。

[1] 公益社団法人 日本産科婦人科学会「コレステロール」

まとめ

いかがでしたでしょうか。

HDLコレステロールが高くなる背景には、単なる生活習慣だけでなく、遺伝的疾患や肝臓の病気、薬の影響などさまざまな要因が存在します。 特に、CETP欠損症や原発性胆汁性胆管炎は、医療機関での診断と治療が必要な疾患です。

ポイントを整理すると以下のようになります
・HDLコレステロール高値の原因は「病気・飲酒・薬」の3分類に分けられる
・CETP欠損症や肝疾患は早期受診が重要
・過度な飲酒・自己判断での薬使用は避ける
・異常値が続く場合は血液検査で確認を

Q&A

Q HDLコレステロールが高いのは良いことではないの?
Aふつうは良い働きをしますが、異常に高い場合は病気や代謝異常のサインの可能性があります。原因の確認が大切です。
QHDLが高くなる病気には何がありますか?
A 主に CETP欠損症 や 原発性胆汁性胆管炎 が挙げられます。どちらも医療機関での検査・治療が必要です。
Qお酒でHDLコレステロールは上がるの?
Aはい。長期間の大量飲酒はHDLを上昇させます。ただし健康によい効果ではなく、他の病気リスクを高めるため注意が必要です。
Q 薬でHDLが高くなることはありますか?
Aあります。脂質異常症治療薬(フィブラート系・ニコチン酸など)や、エストロゲン、インスリン、ステロイドがHDLを上げることがあります。
Q HDL値が高いと言われたら病院へ行くべき?
A 異常高値が続く場合は受診が推奨されます。背景に病気が隠れていることがあるため、早めに原因を確認しましょう。