HDLコレステロール改善に効果的な食べ物と毎日の食事の工夫を紹介
HDLコレステロールの低下は、生活習慣の中でも「食事」と深く関係しています。 特に肥満や糖質の過剰摂取はHDL値の低下を招きやすく、逆に食生活を工夫することで改善することが可能です。
摂取カロリーを適切に管理すること、糖質をとり過ぎないこと、そして青魚などに含まれるn-3系脂肪酸を意識的に摂取することが、善玉コレステロールを増やすための重要なポイントです。
この記事では、HDLコレステロール値を食事で改善するための具体的な栄養の工夫について解説します。
HDLコレステロール値を改善するためのポイント
「HDLコレステロールの値を改善したいけどどうすれば良いんだろう?」
HDLコレステロールの低下を防ぎ、改善するには、肥満の予防、運動不足の改善、禁煙が必要です。 具体的には以下のようなポイントを押さえて生活すると良いでしょう。
この記事ではこれらのポイントについて具体的にどのようなことをするのかを解説します。
ポイント1 摂取カロリーを適切に制限する
HDLコレステロール値の改善には、摂取カロリー(エネルギー摂取量)を適正に保つことが重要です。
HDLコレステロール値低下の原因となる肥満は、摂取カロリーが消費カロリー(エネルギー消費量)を上回り続けることによって起こります。 このため摂取カロリーを抑えることで肥満と、それによって引き起こされるHDLコレステロール値の異常を改善できると考えられます。
どの程度のカロリーを摂取すれば良いかは、ご自身が適正な体重であった場合に必要となるカロリーを目安にすると良いでしょう。 適正な体重を知るにはBMIが参考になります。
BMIが22のときの体重は「標準体重」と呼ばれ、統計上脂質異常症や糖尿病、高血圧といった病気に最もかかりにくいことが分かっています[1]。
標準体重は[身長(m)の2乗]×22で求められます[1]。
肥満の予防や改善を目指す場合、ひとまず標準体重を目指してみると良いでしょう。 目標とする体重が決まったら、ご自身が1日に摂取すべきエネルギー量を計算してみましょう。
1日に必要なエネルギー量は年齢や性別、日常生活や運動でどの程度体を動かしているかを示す「身体活動レベル」によって変わります。
身体活動レベルは以下のような3段階に分かれています。
| 身体活動レベル | 日常生活の内容 |
|---|---|
| 低い(Ⅰ) | 生活の大部分を座って過ごしている場合 |
| 普通(Ⅱ) | 座って過ごすことが多いが、立った状態での作業や徒歩移動、家事、軽いスポーツなどをしている場合 |
| 高い(Ⅲ) | 歩いたり立ったりしている時間が長い場合、あるいは活発な運動習慣がある場合 |
厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」をもとに執筆者作成
ご自身の年齢と性別、身体活動レベルから該当する体重1kg当たりの推定エネルギー摂取量をチェックし、目標体重と掛け合わせてみましょう。
| 性別 | 男性 | 女性 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
| 18~29歳 | ||||||
| 30~49歳 | ||||||
| 50~64歳 | ||||||
| 65~74歳 | ||||||
| 75歳以上 | ||||||
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
例えば、目標とする体重が50kgで身体活動レベルがⅡ(普通)に当たる20代女性の場合、1日の摂取カロリーの目安は38.7(kcal)×50(kg)で1,935kcalです。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」
ポイント2 炭水化物(糖質)を適切に制限する
HDLコレステロール値の改善には炭水化物(糖質)の摂取量を適切に制限することも重要です。
HDLコレステロール値の改善には、炭水化物(糖質)から摂取するカロリー(エネルギー量)を1日に摂取するカロリーの50〜60%に抑えることが勧められます[2]。 なお炭水化物は1g当たり4kcalのカロリーを産生します[3]。 このため1日の推定エネルギー必要量が2000kcalの人は1000~1200kcal、重量にして250~300g程度を目安に炭水化物を摂取すると良いでしょう。
炭水化物はご飯やパン、麺類などの主食類や、いも類の他、砂糖、甘味料を用いた甘いもの、果物類などに多く含まれています。
[2] 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
[3] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
ポイント3 n-3系脂肪酸を適切に摂取する
HDLコレステロール値の改善には「n-3系脂肪酸」を適切に摂取しましょう。
n-3系脂肪酸はHDLコレステロール値をわずかに上昇させると共に、中性脂肪値を低下させる効果があるとされています。 中性脂肪値の上昇はHDLコレステロール値の低下と連動することが多いといわれているため、HDLコレステロール値を改善したい場合は積極的に摂取すると良いでしょう。
厚生労働省はn-3系脂肪酸の目安量を設定しています。
| 年齢など | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 18~29歳 | ||
| 30~49歳 | ||
| 50~64歳 | ||
| 65~74歳 | ||
| 75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
n-3系脂肪酸にはα-リノレン酸、DHA、EPAがあります。 α-リノレン酸はあまに油など、EPAとDHAはさばやいわしなどの青魚に含まれています。 1日に一切れ程度の魚を食べることが推奨されているため、日々の食生活に取り入れてくださいね。
ポイント4 適度に有酸素運動を行う
有酸素運動にはHDLコレステロール値を上昇させ、中性脂肪値を下げる効果が認められています。 低HDLコレステロール血症を含む脂質異常症を改善するには、合計30分以上の有酸素運動を毎日、少なくとも週に3日実施することが勧められています[4]。
まとめて運動時間を取れない方は、短時間の運動を数回行って合計30分以上としても構いません[5]。 行う有酸素運動の種目としては、中程度以上の強度が望ましいとされます。 これには普通の速さのウォーキングやスロージョギング、軽めの水泳やサイクリングなどが該当します。
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症を改善するための運動」
ポイント5 禁煙する
HDLコレステロール値改善のためには禁煙を行うことも重要です。
たばこはHDLコレステロールを低下させるだけでなく、ニコチンをはじめとした有害な化学物質を多数含んでいます。 これらの物質は血管に炎症を生じさせたり血液をドロドロにしたりすることで動脈硬化を促進し、血栓をできやすくします。
HDLコレステロール値の改善に加え、動脈硬化を抑制するためにも禁煙は大切なのですね。 自分の意思で禁煙することが難しい方は禁煙外来を受診すると良いでしょう。
HDLコレステロール値の低下を含む脂質異常症の改善には、運動や禁煙などを併用するのがより効果的だといえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
HDLコレステロールの改善には、日々の食事習慣が大きな鍵を握っています。
特に以下の3点が重要です。
摂取カロリーを適切に管理して肥満を防ぐ 糖質をとり過ぎないように制限する 青魚やあまに油などに含まれるn-3系脂肪酸を積極的に摂る
これらを意識することで、HDLコレステロールを高め、中性脂肪や動脈硬化のリスクを下げることが可能です。 食生活の改善は無理のない範囲から始めることが継続のコツです。